殴られる、罵られる、物が無くなる
これが日常
『こーゆうのがアンタにはお似合いだよw』
毎日言われたこの言葉
助けてくれる人なんていなかった
皆人を哀れむ目で見て、私を見て見ぬふりをする
先生は気にも止めない
父はいない
母にも殴られる
こんな世界に私は必要ない
『救われたい』
その一心で私はマンションの屋上から身投げした
『これで永遠に今日にさよならだ』
気づいた時にはもうずっと一緒にいた。
物心ついた時から傍に居てくれた。
悲しい時も
嬉しい時も
辛いことがあった時も
世の中をこれでもかと恨んでいる時も
人生で幸せの絶頂にいる時も
ずっと一緒にいてくれた。
この子はもう私の1部であり、宝物。
もう代わりなんてない。
私の一番のお気に入り。
醜い、勉強も出来ない、自信もない、取り柄もない。
自分は誰よりも劣ってる。
周りと比べて出来ない事ばっかり。
将来の夢も希望も自分にはない。
どこまで行っても自分は自分でそれ以上でも以下でもない。
努力したって変われはしない。
こんな自分を捨ててどこかに消えてしまいたい。
なのにこんな自分を見捨てないでいる人がいる。
嬉しいはずなのに…
幸せなはずなのに……
ただの呪いにしかならない………。
こんな自分を気にかけてくれた。
受け入れて、向き合ってくれた。
そんな唯一の人さえ受け入れられない自分は
誰よりも自分を、世の中を、全てを恨んでいる。
ふと部屋の整理をしているとひとつの封筒が出てきた。
『10年後の私へ』
日にちは今からちょうど10年前。
つまり今読んでも支障はないということだ。
内容は簡素で10年前の日常をひたすら書き綴られていた。
あぁ、今思えばあの頃の私はどうかしてたと思う。
寝て、起きて、いつものルーティーンを終わらせまた寝る。
そんな日々を淡々と1人で送っていた。
今ではそんな日々も忘れてふわふわとまた違う日常を送っている。
手紙も終盤。
『今、大切な人はいますか?』
たった数文字。たった1文が私の心に突き刺さった。
正直に言うと、私に大切な人はいる。
今は遠くにいるがずっと大好きな人だ。
多分もうすぐ会える。
彼には新しい人を探せと言われたが、私にはもう彼しかいない。
私にとって彼を超えるような人は居ない。
全ての人生をかけても見つからない自信がある。
それくらいには彼が大切で、大好きで、愛している。
あぁ、もうあれから10年経ったのか。
10年…。とても長いようであっという間だった。
彼にもうすぐ会える。
そう考えると嬉しくもあるが、それと同時に物悲しさもある。
私ももう80だ。
もういつお迎えが来てもおかしくは無い。
悔いが無いと言ったら嘘になるが、彼に出会えて、彼を看取って、私には勿体ないぐらい幸せな人生だった。
あぁ、早く彼に会いたい。