#秋晴れ
このところは景色を眺めて
ホッと一息つく暇が無かった
夜風が一段と涼しくなっていて
ふらっと立ち寄ったファミレスのメニューで
秋の到来に気付かされた
カーテンを閉め切った部屋で朝から仕事
急な呼び出しで家を出た
駅までの道がやたら速く感じたのは
きっと秋晴れの爽やかな天気のせいだ
#忘れたくても忘れられない
幼稚園の父親参観日
仕事のスケジュールを調整して祖父が来てくれた
赤茶色の背広にネクタイをかっちり締めて
どの若いお父さんたちより粋だった
やたらに声や手をかけずに見守られる中
私は誇らしさと共に大きく安堵していた
父がいないことを揶揄われたりしたらなんて
もうすっかり忘れていた
どんな想いでそこにいてくれたのだろう
きっと私が思う以上に色んな事を思ったのではと思う
大人になった今でもこの日の事を思い出す
嬉しかった 誇らしかった 幸せだった
ありがとう おじいちゃん
#やわらかな光
桜の花びらが雨粒の重たさに首をもたげる頃
私たちは緑いっぱいの公園にいた
屋根付きのベンチの下
テーブルにはおにぎりとサラダチキン
読書には少し肌寒い曇り空
雲に隠れたやわらかな光を受けて
君の輪郭が優しく香った
#鋭い眼差し
我が家は作法に厳しかった
商いをしていたからか常にお客さんがいることが多く
色んな大人に囲まれて育った
挨拶や言葉遣いはもちろん
食事のマナーにも注意が行き渡る家だった
祖父や母の鋭い眼差しは
私の姿勢をいつも正しくしてくれた
身についた所作やコミュニケーションスキルには
大人になってからふと気付かされた
気を張らなくても出来ることが多いことの
何て楽なことなのだと
#高く高く
高く高くと足掻いてばかりだと
足元がグラグラしてくる
首を上に上げすぎているから
遠くの景色を見渡すことは難しい
一度に高いところへ飛べない私たちには
高く高くより
遠く遠くが好ましい