『0からの』
「あーあ、またやっちゃった……」
「やばすぎ」
またやった……と言ったコイツは友達……いや親友。
「ビーカー割るの3回目。何回怒られたら気が済むんだか」
「わざとじゃないし!」
「あー!戻りてぇー!」
「……どこまで?」
「え?……んー、そうだな」
「1…………いや、0から。」
……0ってなんだろう?
時は過ぎる。
待ってくれない。
過去のこと、1秒前のことだって0になれる。
なら……
「おーい?」
「!!」
「ぼーっとしてたね?」
「全く、深読みしすぎだよー!」
「……え?」
「戻りたい?んな訳ないじゃーん!今、楽しいし!」
「……あー、でも割る前には戻りたい」
「都合が宜しくて」
「それが私!」
「なるほどね?」
「どゆこと」
でも、同感だ。
私だって今が楽しい。
戻る気なんてない。
なーんて、口に出せないけど……
口に出せるアイツはすごいな、
「んふふふ……」
「(顔に出やすいからわかりやすいんだよなぁ……笑)」
『時計の針』
「はぁ、」
深いため息をつく。
また休んでしまった。
逃げたのだ。
カチ、カチ、カチ、カチ。
時計の針がうるさい。
熱があるんじゃない。
友達と喧嘩をしたわけじゃない。
いじめられてるわけじゃない。
部活も充実していて楽しい。
学校は、楽しいはずなのに。
いつからだろう、こう思い始めたのは。
布団の中でスマホをポチポチ。
楽し……いのかな。わからない。
こうやって一日が終わる。
私に時計の針は速すぎた。
『優しさ』
「にっしー優し〜!」
にっしー。西田だからそう言われてる。
僕はよく優しいって言われる。
自分じゃよく分からない。
みんな、なんで優しいって思うんだろう。
僕の性格……。
流されやすくて断れない。
そんな感じ。
争いは嫌いだ。
だから譲る。自分自身が嫌でも。
すると、
「流石にっしー。優しいね!」
……って帰ってくる。
そんなつもりないのに。
優しさってなんだろう。
相手を許す?
相手に合わす?
空気を読む?
分からない。
優しさって甘えなのかな。
自分も、相手も。
自分は傷つきたくなくて、相手はそれに甘える。
考えて、考えて、考えて、考えて、考える。
考えるほど、考えるほどに、甘い優しさに溺れていく。
『こんな夢を見た』
「今日の宿題は、自分の進路について考えてみましょう。皆さんの将来やりたいことをこの紙に書いて提出してください。」
進路、進路。
小さな頃はたくさんの夢と、希望を抱いていた。
将来の夢。そう聞かれると3つくらい余裕で言えるように。
今の私はどうだろう。
なんの取り柄もない真面目が。
いい所を全て真面目に取られた私。
帰りながら、そう思っていると家に着いてしまった。
一体どれくらい考えていたのだろう。
昔の記憶をたどる。
年長の頃に書いた夢は「たこ焼きになる」だった。
1年生から3年生は「ぬいぐるみ職人」
4年生から6年生は「お笑い芸人」
じゃあ中学生は……?
学校で書かされた紙を1枚1枚めくっていく。
そこである共通点に気づいた。
「私は……人を笑顔にしたい……?」
はぁ、とため息が出た。
そんなこと思ってもみなかった。
高校2年生の私。
将来の夢は人を笑顔にしたい。
具体的な職業じゃないけれど、こんな夢を見たって良いだろう?
『タイムマシーン』
タイムマシーンを貰った。
往復で1度きりしか乗れない。
過去に行ってみるか?
後悔を何度もした。
それは数え切れないほどに。
笑い話もあるけれど、ほとんどが笑えない。
一つだけ変えたって一緒だろう。
多分、きっと。
未来に行くか?
未来に行ったってそれが本当にそうなるかは分からない。
誰も分からない、未知の世界。
「……そもそもこれを使うべきじゃないな。」
今 自分は、自分の人生のピースを、パズルのピースを埋めている。
パズルは自分で作っているように見えて完成系が決まっている。
過去も、これからの未来も変えられない。
ならこれを使う意味は無い。
自分はタイムマシーンを壊した。