お題『巡り会えたら』
君がよく行くというマックに行く。君はいない。君のストーリーによく上がってたサウナに行く。君はいない。君の部活の大会に行く。君はいない。君が好きだと言ってた本を買う。君はいない。君の最寄りの駅に行く。君はいない。君の家の前に行く。君はいない。君の部屋に入る。君はいない。君はどこにもいない。
鼻に抜けるお線香の香り。何度も来たはずのこの部屋から、君の匂いは無くなっていた。私は君の匂いをもう思い出すことが出来ない。前がぼやけて、頬が冷たい。いつの間にか泣いていた。
もう一度君に会いたい。
どうかもう一度だけ、君と巡り会えたら────
お題『奇跡をもう一度』
クルッ
ドサッ
「はい、雑魚〜」
「次俺の番な!」
既にご飯は食べ終わったお昼休み。突然にもペットボトルチャレンジが始まった。ペットボトルを空中で一回転させてから、立たせるというチャレンジ。今それを4人連続で成功させようとしている。
「おい!見とけよ」
クルッ ストン
「うおおおー!!」
「まずは1人目!」
ただのつまらない遊びだと思うかもしれないが、何故かこれは異様に盛り上がる。高校3年生になっても馬鹿なことしかやってない。こうやってバカ騒ぎするのもあと何日かと思うと…、
クルッ ストン
「まじか!!」
センチメンタルな気持ちになってる俺を置き去りに、2回連続成功。
「やべー、緊張する」
「3回連続かかってんだから、絶対成功させろよ」
「おっけーおっけー、まかせろ」
クルッストン
「サイコーー!」
「ナイス」
「やるぅ〜!」
3人から賞賛を送る。残る1人の顔がプレッシャーで歪んでいる。そう、俺の顔である。どうせそんな連続で出来ないだろうと高を括っていた。
「待って待って、ノーカンの練習させて」
「バカバカ、そんなんさせる訳ないだろ」
「ここで決めてこその男!」
「お前の男気見せてみろっ!」
成功するビジョンが見えなすぎる。しかし、もうやるっきゃない状態になっている。
「失敗しても、罵詈雑言は禁止な」
「いくぞ」
クルッ
ストンッ
「うおおおおぉ!」
「俺らすげー!!」
うるさくなりすぎて、周りの視線が体を突き刺す。でももう、そんなのどうでもいい。今が楽しい。
「こんなしょーもないのに、奇跡使うなんてもったいねーよな」
「それはまじでそう」
「でもさ、もっかいやんね?」
ニヤニヤ顔でペットボトルを掴む。
あと何日かだけのこの青春を、もう少しだけ噛み締めたい。体育祭や文化祭みたくあの時楽しかったね、と思い出されることは無いだろうけど、確かにあった俺たちの青春を。
クルッストン
「まずは1人目ーー!!」