「たくさんの思い出」(創作)
はじめまして。
こんにちは、私の宝物。
小さく生まれたあなたは、何をやるにも人一倍時間がかかったね。
ハイハイするのも、おすわりするのも、立って歩き出すのも。
最初に話した言葉は「マンマ」
パン粥食べれた。
五目ごはんが食べれた。
初りんごは、すっぱかったね。
すごい顔して、猫のようにまるいお手々で、こすりつけていたっけ。
おいしいものを食べると、ジャンプして喜んだ。
外に散歩にも行ったね。
春は桜を見て、夏は庭でビニールプール。
秋はどんぐり拾って、冬はめったに降らない雪が積もって、雪だるまを作った。
勉強が苦手で、泣いた日もあった。
授業参観には来なくてもいいと、1年生の時から言ってたよ。もちろん、行かない時なんて一度も無かったけど。
恥ずかしかったの?
細かいことをあげたら、本当にたくさんいろんなことがあったけれど、どれも私の大切なかけがえない時間です。
「行ってきます!」
そんなあなたもいつしか、社会人!
人生まだまだこれからだけど、乗り越えて行く力を身につけていって欲しい。
自分なりの幸せを、掴んで欲しい。
私はずっと、あなたの味方です。
生まれてきてくれてありがとう。
あなたのお母さんにしてくれて、
ありがとう。
『冬になったら』(創作)
こたつに入って、みかんを食べる
あったかいおでんを食べる
スノーボードに行く
イルミネーションを見る
近場で良いから、温泉に行く
着ぐるみパジャマを買う(パンダ)…
北欧調の雑貨が置いてる店から出た後、冬になったら何をやりたいか、女友達に尋ねたところだった。
やりたい事を数えるように、指を一つずつ折り曲げて空を見上げた。白くて細い指が、僕には眩しく映る。いっそのこと、いま告白してしまおうかと思うくらい綺麗な青空に、黄色のイチョウの葉が輝いている。
「ぼーとしちゃってどうしたの?」
「どうもしないよ。冬になったらやりたいことってそれだけかよ」
「それだけできるだけでも、幸せだよね、それと…」
彼女が人差し指を顎に当てながら軽くコツコツと叩く仕草をして歩き始めた。僕はその小さな歩幅に合わせて何も言わず続いて歩いた。
「一緒にいられたら良い冬になるよ、きっと」
大型バイクが僕たちの横を通り過ぎて、声が聞こえなかった。
「え?!え?!なにもう一回言ってー!」
「やーだー」
秋の風が、ほんの少しだけ僕たちの背中を少し押してくれたような気がした。
『はなればなれ』(創作)
「後悔のないように生きなさい」
母が私によく言う言葉だ。
その言葉を大切にして生きてきたつもりだった。
決して派手な生活を送っているわけでもなく、かと言って不幸でもなく、本当に普通に。でも、後悔のないように、楽しく生きている。
私はうまく生きられていますか?
進んできた道は、これで正しかったですか?
【大丈夫】って笑ってくれないかなぁ、
ねぇ、お母さん…。
時々、無性に会いたくなる。
ふぅと小さなため息をはいて、空を見つめると、一番輝いている星が【大丈夫】って笑ってるみたいに見えた。