NoName

Open App
12/4/2022, 2:47:42 AM

桜の木の下でお姉ちゃんは笑った。
「元気でね、ずっと待ってるから」

私が生まれる前に病気に勝てずに亡くなったお姉ちゃん。
私が事故に遭ってから、見えるようになったお姉ちゃんは、いろんなことを教えてくれた。
学校の宿題も手伝ってくれた。相談も乗ってくれた。

お姉ちゃんは私に生きる面白さを教えてくれた。
幽霊に教えてもらうのも不思議な気分だけど、それ以上に楽しかった。

ある朝、起きたらお姉ちゃんは居なくなっていた。
どこ?
私は必死に探した。

近所の大きな公園の立派な桜。
その木の下に立っていた。
「ごめんね、お姉ちゃん、本当は…」

私は本来、交通事故で死ぬ予定で、お姉ちゃんは死んだ私の魂を連れていく死神だったのだ。