雪明かりの夜
冬の夜は上からも下からも明かりがある
明かりに挟まれた私たちは
まるで雪物語の一員になったようだ
息も白い 雪も白い 明かりも白い
どれだけ白ければ気が済むのだろう
白いと何かをしたくてしょうがなくなる
汚す、書く、描く、塗る……
自分の存在を示したくなる
私の目の前で雪が降るのはいい
ただ積もらないでほしい
その白に負けてしまいそうになるから
誰かの隣で、私の存在を確認しないと
私は雪と一緒に溶けてしまいそうで怖い
私は、繋いでいた手をぎゅっと強く握った
祈りを捧げて
神頼みは好きじゃない
私の努力を代替する係のように思ってしまうから
神に祈るのは好きじゃない
神も太陽も聞く耳を持たないから
祈りを捧げるのは言葉にだけだ
ここで何かを書いている人間は きっと
言葉という存在の強さを信じている
言葉という存在の脆さも信じている
だから書くことは祈りなのだ
誰かに送る文章は
「私を理解してほしい」という祈りだ
人は自分を理解してほしいから
言葉を作った
私は先祖たちの作った言葉で
現代的な詩を紡ぐ
ぬくもりの記憶
あなたの手があたたかいなら
私は体に自己発電はいらないと言った日
人間の体が自分で暖かくできなくてもいいと言った日
あなたの手はいつもより暖かく
どこか強く 離したくないという願いが
手を握る力から溢れていた気がする
私があなたから離れると思っていたのだろうか
それとも
私があなたを置いていくと思っていたのだろうか
そんなことはないとはっきりと言おう
あなたが私の隣にいない人生は
とても退屈で 生きているか死んでいるかも分からなかった
だから あの日のぬくもりは
死ぬ瞬間まで忘れるわけにはいかない と
凍える指先
指先の感覚
指先を寒さに握られる
私の指先なのに私の言うことを聞かない
なぜ人間には暖房機能がないのだろう
発熱は普通に体調不良なので横に置くとして
「寒い」ときになぜ
「暖かくなる」という条件が体につかなかったのだろうか
それはきっと
人間を孤独にするためだ
人は助け合わないと生きていくことができない
助け合いは心を温かくする
その温かみは決して
自己発電でまかなえるものではない
そうでなければ
あなたと握った手が
こんなにもあたたかいと感じることができないじゃない
白い吐息
寒暖差の絵の具
息が視界になる冬という季節
寒さは嫌いだけど
白い吐息を作る瞬間は好きだ
白い吐息を吐く人の心が
温まっている証拠だからだ
太く、長い、息の線
今年の冬は暖冬ではないらしい