理想郷
その響きはなんて夢見心地で
魅力的なのだろう
でも私の描く
理想の形は
と言われると分からない
身の回りの事はロボットが全部やってくれて
空が飛べて
一生遊べて
それが私の理想郷?
そんな私は安っぽい幸せを求めてるの?
絶対その先の不満が
私を苦しめる未来が見えてる
でも不幸があって苦しむことがあって
たしかにそれは幸せへの糧だけど
それが死ぬほど辛くて未来のない絶望ってこともある
それでもその先に幸せが待っているのなら
苦難とかいう不幸
あなたの夢見る理想郷に
そんなものが存在していいって心から言える?
地獄に落ちても必ず天国が待ってるとか
幸せの先には不幸が待ってるとか
そんなことに左右されている時点で
それって理想郷なの?
たとえ貧困に苦しむ環境、虐待に苦しめられる環境
どうしようもなく不幸な環境に生まれても
同じことが言えるの?
もっと絶対的な幸福を感じられる世界
心から信じられるあたたかな愛が注がれて
何があろうと着いてくる自分という存在への愛を抱く
幸福って何で満たされるのか
私にはよく分からないけど
そんな絶対的な愛があるならば
生きてるだけで幸せなのかな
そこは理想郷の名に相応しい
綺麗事に満ちた世界かもしれないけど
そう、そこはあくまでも理想の世界
【懐かしいこと】
目まぐるしく移ろう時代の流れ
たった一年前 たった二年前でも
ものすごく懐かしく感じる
色褪せずに輝き続ける記憶の中の君
またいつかを信じてしまう自分と
もう戻れないと分かっている自分が
さらに拍車をかける
君のあまりの眩しさに
気づけば息ができなくなった
【もう一つの物語】
一つどころじゃない
もしこうしていたら
あれをしなければ
なんて腐るほどある
でも
存在しない未来もない
未来は全て決まっていて
私たちは自分で選んでいるようで
全ては定められた命運
とも私は思わない
未来は私の選択で変わる
それは確かな事実だ
あなたの選択で私の未来が変わる
私の選択であなたの未来が変わる
自分の命運が誰かに握られた時
それで人のせいにできるなんて甘えるのも愚かだ
未来の選択は
たとえそれが
朝起きるか二度寝するかなんて小さな選択でも
ひとつの重い大事な選択
繰り返される日々の中で
その重圧から逃げた気になっているだけ
だから
運命とか宿命とかそんな無責任な言葉で終わらせない
全ての事は
私が選んだ私だけの大切な“使命”
わたしが生きる世界は
使命という選択に満ち溢れている
わたしのもう、「ひとつ」の物語
それは究極の二択
今、わたしが息をしていない世界
なのかもしれない。
【暗がりの中で】
[ひかり]
ただ盲目に
在ると疑わなかった
目の前に広がる世界
たった一点が
歪んで見えた
ただそれだけで
全てがどろけて跡形もなくなった
今の僕には
在るはずのものも何も見えない
物体を反射し眼に届ける
大事なものが存在しない
前かも後ろかも分からぬままただただ進む
なんて大層な言葉で表すのも笑えるくらい
愚かに彷徨い放浪する
ふと
風を感じた
目には見えぬ
素敵な気が
すうっと首を包み
あまりに小さなその肩に
少しずつ
僕の身を纏う気流を移し替える
それは僕じゃなくて
でも僕の足が連れてきた場所
生かす
ただそこに在る影を信じて
【紅茶の香り】
日々の喧騒から解き放たれた
土曜の少し遅めの朝
優雅な自分を着飾りたくて
少し冷めた紅茶を啜ると
懐かしさが香った
ストレートティーにガムシロ4つ
糖尿病になるよと言いながら
君に渡したいつかの朝
どれだけ経ったかも忘れていても
ただ分かるのは
その時君が僕の隣にいて
今もこの惨めな身体は覚えているということ
今日も
暖かな紅葉の香りに包まれながら
生ぬるい心を呑み込む
きっとどこかで微笑む君の唇を脳裏に掠めて