〔クラス替え〕
あれ、私だけ違う。そっか。
また、ともだち、仲良くしないと。
中1ではする必要がなかった[グループ作り]。
今年度は誰かに話しかけなきゃ。
私の通う中学校の生徒は、同じ小学校からそのままあがってきた同級生がほとんどだったことと、1年生のクラス分けではたまたま仲の良い友だちと同じクラスになれたことから、勝手に仲の良いグループで過ごせていた。
友だちとは狭く深く付き合っていきたい性分だった私にとって、そのクラスは居心地がたいそうよかった。
2年生に進級した4月。クラス分けの紙を見てぼう然とした。仲の良かった友だちとは1人だけ違うクラス。
それに加えて話したことのない同級生ばかりだし担任も初めて見る名前だった。
…どうして?
夜、自室で暗闇に向かって投げかけた。
自分で言うのもなんだが、優等生な方だ。先生からの信頼も厚い。今回のクラス替えははっきり言って[はずれ]を引いた。問題児だらけで受験勉強の妨げになりかねない。
…どうして?
友だちと一緒が良かった。あの子と一緒ならまわりがどんなに問題児でも耐えられただろうに。
あのクラスで1年間過ごさないといけないのかと思うと震えがはしった。
…どうして?
また暗闇の中、同じ言葉に辿り着く。
……どうして?
#どうして:3
〔憧れの人へ〕
—先輩。お久しぶりです。
部屋の掃除をしていたら先輩からの古いお手紙を見
つけたのでこれを書いています。
貴方の背中を追いかけ始めてから早十年が経ってし
まいました。何もかもを教えてくれた先輩のまわり
にはいつもたくさんの後輩たちがいましたね。
もう四年以上会えない日々が続いていますが、そち
らはどうですか。顔も、声も、匂いも、時の流れの
中で薄れていってしまうのを痛感しています。
またいつか。どこかで。会えるでしょうか。
別の世界で過ごす貴方のことをずっと慕っていま
す。
深夜一時半。ふと窓の外を見ると、うさぎは青い惑星を見下ろしながら餅つきをしていた。
手紙に封をし小さな溜め息をつくと、部屋のあかりを消して布団に潜り込んだ。
今日は良い夢がみられそうだな。
そっと目を閉じた。
夢をみてたい。ずっと。この夢だけは...。
#夢をみてたい:2
〔初恋。〕
恋愛なんてなにも知らないまま過ごしてきた私。
高校生になって、初めてこの気持ちと出会った。
いつのまにかその人のことを考えていたり、いっぱいイメトレしていたおしゃべりだって、なぜかうまくいかずに空回り。お布団にくるまりながら日々小さな反省会したり。これまで縁のなかった恋愛ソングに共感できた時には、ちょっとだけ大人になったような気分にもなった。
同学年でおんなじ部活動。最初の印象はちょっぴり苦手だったけど、話すとなんでか会話が弾む。
高身長で成績優秀なあの人はなにもかも私よりすごくて、憧れの存在だった。
2年生でおんなじクラスになってから仲良くなってきたけど、もうすぐお互い受験生。
志望校なんか全然違ったけれど、一緒に勉強とかしてた。
3年生になるとまたクラスは別々に。そのまま時は過ぎてもうすぐ一次試験。
推薦入試の私からはもう声かけたりなんかできないけれど、誰よりも応援してる。
この絶妙で、シャボン玉みたいに儚くあやうい関係を私は守っていきたい。
ずっとこのまま。
#ずっとこのまま:1