水中に透き通る波の音が
拍子抜けするほどに心地良くて
泡沫を巻き込みながら
水面が
遠ざかる

もう日が暮れるのに
「海に行きたいね」
ただそれだけのこと
風が青く通り過ぎた

何をしたくて 何処へ行きたくて
わからないまま
立ち止まれもせず 歩いてきた此処は
辿り着きたかった “遠く” だろうか

ひと粒の透明が
弾けて 砕けて
キラキラ 消えた

あの時よりずっと暑くて
あの時よりずっと汚れてるのに
あの時と同じ 匂いがした