手を繋いで
冬に凍える さんぽ道
夜明けの前の むらさきの空
ひそひそ語らう 虫たちや
遠くで鳥も 目覚めたか
老いた夫婦の 隠れた冒険
そっと寄り添い
手を繋ぐ
口に出来ない いばら道
よくぞここまで 来たものですね
子供や仕事や 親のこと
なんどもけんか やりました
老いた夫婦が 畳んだ人生
ちょこっと許して
手を繋ぐ
親や知り合い 逝った道
かぞえてしまう 残りの日々を
真冬に咲いてる 花に泣き
昇った朝日の 赤に泣く
老いた夫婦の 早朝さんぽ
照れてはにかみ
手を繋ぐ
ありがとう、ごめんね
私は入院した
会社の後輩が来た
「休日返上? 仕事も任せて…」
救急車を呼んだ隣人が来た
「命拾いしてたよ、驚かして…」
親友が差し入れを
「これこれ、いつも急に頼んで…」
母が駆けつけた
「遠方なのに。誰が電話した?…」
ありがとう、ごめんね
それが口癖になる
そして、
犯人もやって来た
「探す手間が省けた、オトリなんだ」
ありがとう、ごめんね
逮捕する
部屋の片隅で
宇宙の 地球の 日本の
故郷の 部屋の 片隅で
かがんで ヒザ抱き 顔伏せ
丸まり 小さく 固まって
それは どんな 幼虫か?
それは どんな 妖怪か?
何を食べ 何を嫌い 何を楽しむ?
昼に隠れ 夜に動き 何で生きてる?
せまい 部屋の 片隅で
スマホに 寄生の 電子になる
寒い 部屋の 片隅で
わたしは 宇宙の ゆうれい船だ
そして 部屋の 片隅で
死んでも だーれも 気づかない
逆さま
まさか?さ 逆さまなんて
ミステリには よくあることさ
股ぐらのぞいて 景色を見れば
そんな名所も あったよね
視点を変える それだけで
魔法使いに なれるんだ
青空の太陽も 夜空の月も
ぼくもあなたも ひっくり返ろう
落っこちちゃったら どうしよう?
拾ってかじって 味見をしよう
逆さま 逆さま 楽しいな
服も男女も 先生と僕らも 逆さま
相手の立場で考える
それって 素敵な 魔法だね
『眠れないほど』
眠れないほど
ざわつくの
帰りを待つように
不安なの
眠れないほど
怖いのよ
すべてが消えそうで
見ていたい
病気の話しを聞くたびに
家族をぎゅっと
抱きしめたくなるの
亡くなるニュースは見たくない
ハンカチ落としの
遊びは嫌いなの
眠れないほど
愛してる
わたしの大切な
宝物