私にとっての虎の穴
少し大きめを買ったシャツ
指までかくれる白い袖に
行き場のない
爪を立てる

「今日は、アレ。やっちゃおう」
４畳には一人だけ
ショーパンに推しのバンT着て
ナッツは噛みながら
プルタブを
３、２、１。
今夜の私は完全無敵

もし、願いが叶うなら
愛する誰かと
人生を共にしたい

もし、願いが叶うなら
愛する誰かと
眠りを共にしたい

もし、願いが叶うなら
愛する誰かと
墓の中まで共にしたい

そう祈って生きてきた私は
「愛する誰か」を見つけました
手に入れるまでは
天井から下げた輪っかは
使わない

全く変わらない
見る夢はずっと別れる前のまま
不甲斐ない
そう一番思ってるのは自分
きっとそう

もし今泣きついても
彼は優しくなる
もし明日帰っても
彼は笑顔で抱き寄せる

それじゃダメな気がするんだ
昔になってしまったあの日
言った言葉を
もっと、腕を磨いて
もっと、認められるようになって
もっと、遥か遠くにある世界を知って
君のとなりで
胸を張れるようになるまで
かえらない
かえれない

寄せては返す
砂浜を濡らす
熱い風の走り抜ける今日
海に来た
ふたり分のビーチサンダル
新しく買った水着も二つ
はずしたピアスはポーチにいれて
波の中呼んでるあいつ
水でもかけてやろうか

スマホに写した
海水浴場は一ヶ月後に開かれるみたい
誘うには早いよな
やめとこうか

腰掛けたベットの上伏せる画面
こいつの乗ってる膝の上
静かに眠っている頭に
手を置く

「今度、水着買いに行こ。」
ぱっちり開いてた綺麗な目
真っ直ぐからかう憎い顔

来月、海に行ってきます。