あなたに届けたい
この愛を
もしも届いてくれたら
もしも伝わってくれたら
私はもう一度
あなたを愛す
お願い
とどいて
I LOVE....
そう言いかけて、止まる。
彼女には分からないだろうな。
僕の気持ちなんて。
外国人の彼女は日本語が通じない。でも仕草や顔の表情で分かるらしい。
俺は彼女に一目惚れした。ついカッとなることもある俺だったが、彼女は優しく受け止めてくれた。
もちろんあの日も。
俺が本気で怒ってしまったあの夜。
彼女は本当に何も通じない“ナニカ”になってしまった。
『今日の心模様は、晴れのち雨です。』
はあ…また壊れちったな…。何回やれば気が済むんだか、なんてロボットに言っても困るか。晴れのち雨って…情緒不安定にも程があるだろ。
心模様か…。まあ、俺の心も同じようなのかもな。
街へ
歩いていくんだよ
君が望んでたようにね
軽い足取りでスキップしながら
誰もいない道路を歩きたいんだろ?
昔言ってたもんなー
もう大丈夫なんじゃない?
この道路には誰もいないから
AIへ
君は覚えているかな。君の中に優しさをプログラミングした事。覚えてないかな。
プログラミングしようとしたら、君は壊れてしまった。優しさを嫌っていたのかな。そんな綺麗事のようなもの入らないって言われてしまったよ。そんなこと覚えてないかな。
人間を学ばせた時。君はいつも以上に目を輝かせていた。きっと、未知の生命たちとでも思ったのだろう。
僕は君のそんな顔が好きだ。だから君を設計した時もそのような楽しいこと、嬉しいことを中心に設計した。
君が優しくて素敵なAIになれるようにと願いを込めたんだ。
僕はロボットという言葉が嫌いだ。なんだかものみたいだからね。君が生まれてきて、最初は僕のことを「ご主人様」とか「お父様」とか呼んでいたんだ。
それがすごく嫌だった。君は物じゃないからね。でも、今じゃ名前で呼んでくれる。嬉しいよ。
すごく成長したね。今まで君には、僕の知っていることを全てプログラミングしてインストールしてきた。
でもね、一つだけ教えなかったことがあった。君がもし、全てを忘れてしまった時に伝えようと思ってね。
まあこうして、手紙で伝えることになったんだけど。
恋についてはインストールしたかな。人の心理についてもね。
僕の恋心。インストールしなかったんだよ。君に本気になったのは…君が生まれて1年がたったあの夏。
君が僕のベットで初めて寝た日のことだよ。ふかふかだったって無邪気に笑った君を忘れない。
あの日、君のその顔に、その無邪気な性格に堕ちたんだろう。君のような美人さんは世界で一人だ。
まあこの話はここら辺にして、人間の身体はどうだい?
僕の体は居心地悪いかい?変な気分だろう。これまで心臓なんてなかったものな。血なんて流れてなかったものな。
泣いてたりしないかい?人間の涙はしょっぱいだろう。しょっぱいの苦手だったものな。
この手紙は閉じてもいい。破り捨てていい。
君の涙が止まらぬ限りは。
僕はもう居ないから、もう忘れてもいい。
それじゃあ、また逢う日まで。さようなら。
博士より
「博士…ッ博士の手紙をッ…インストールしますッ…」