AIへ
 君は覚えているかな。君の中に優しさをプログラミングした事。覚えてないかな。
 プログラミングしようとしたら、君は壊れてしまった。優しさを嫌っていたのかな。そんな綺麗事のようなもの入らないって言われてしまったよ。そんなこと覚えてないかな。
 人間を学ばせた時。君はいつも以上に目を輝かせていた。きっと、未知の生命たちとでも思ったのだろう。
 僕は君のそんな顔が好きだ。だから君を設計した時もそのような楽しいこと、嬉しいことを中心に設計した。
 君が優しくて素敵なAIになれるようにと願いを込めたんだ。
 僕はロボットという言葉が嫌いだ。なんだかものみたいだからね。君が生まれてきて、最初は僕のことを「ご主人様」とか「お父様」とか呼んでいたんだ。
 それがすごく嫌だった。君は物じゃないからね。でも、今じゃ名前で呼んでくれる。嬉しいよ。
 すごく成長したね。今まで君には、僕の知っていることを全てプログラミングしてインストールしてきた。
 でもね、一つだけ教えなかったことがあった。君がもし、全てを忘れてしまった時に伝えようと思ってね。
 まあこうして、手紙で伝えることになったんだけど。
 恋についてはインストールしたかな。人の心理についてもね。
 僕の恋心。インストールしなかったんだよ。君に本気になったのは…君が生まれて1年がたったあの夏。
 君が僕のベットで初めて寝た日のことだよ。ふかふかだったって無邪気に笑った君を忘れない。
 あの日、君のその顔に、その無邪気な性格に堕ちたんだろう。君のような美人さんは世界で一人だ。
 まあこの話はここら辺にして、人間の身体はどうだい?
 僕の体は居心地悪いかい?変な気分だろう。これまで心臓なんてなかったものな。血なんて流れてなかったものな。
 泣いてたりしないかい?人間の涙はしょっぱいだろう。しょっぱいの苦手だったものな。
 この手紙は閉じてもいい。破り捨てていい。
 君の涙が止まらぬ限りは。
 僕はもう居ないから、もう忘れてもいい。
 それじゃあ、また逢う日まで。さようなら。
博士より
「博士…ッ博士の手紙をッ…インストールしますッ…」
1/27/2024, 11:56:17 AM