どうして
お母さんは出ていったの?
どうして
春になったら桜が咲くの?
どうして
織姫と彦星は年に一度しか会えないの?
どうして
お菓子を交換出来るの?
どうして
枕元にプレゼントがあるの?
どうして
もうお母さんはいないの?
あのね、いい子だから泣かないでね
お母さんが出ていったのはね。
少しだけ旅に行ったんだ。
ちょっと長い旅にね。
桜が咲く理由?
春になったら、花の妖精が桜を咲かせに来るんだ。
ピンクの服を着たおじいさんがね。
織姫と彦星はなんで年に1度しか会えないのって?
織姫と彦星は、一緒にいたら何も出来ないんだ。
お互いに大好きだから。
枕元にプレゼントが置いてある理由?
その日だけ、枕に魔法がかかるんだよ。
良い子の枕だけにね。
お母さんがいないのはね。
もっと遠くへ行ったんだよ。
でもね、きっと君に会いに来る。
どうしてなんて聞いているうちは、まだ知らなくてもいいんだよ。
夢を見てたい
あの夢を
なにからなにまで、私の自由
あの夢は
もう覚えていない
今日の夢は
…覚えてない
でも、もう一度見たいと
思う自分がいる
覚えてないはずなのに
寒さが身に染みて
やっぱりちょっとだけ寂しかった
あの子って、もういないのかな
三日月
あの日、彼は飛び立った。
月夜の真下で、大空に。
世間はこう言う。
「苦しいことがあったなら、言えばよかったのに…」
「可哀想…」
「人が心配しているのがわかっているのか?…」
彼は返す。
「言えなかったからだよ、偽善者が…。」
「可哀想だと思うなら助けろよ…。」
「心配なんて、ただの期待だよ…。」
私は言う。
「最初から何も無かったら良かったのに…」
「天国はどんな所かな…?」
「もし、貴方と共に死ねたら…!」
彼は返す。
「君と僕だけいれば良かったんだ…」
「君と、一緒に行きたかったよ…?」
「僕がまだ、生きる気力があったら…!」
もう彼は戻ってこない。
あの透き通った瞳も。
優しく暖かい声も。
細く白い身体も。
もし、私に出来ることがあれば、何でもやります。
どうか、神様!
あの三日月のように、彼を楽にしてください…!
「どうか、神様!」
「あの子が楽になれますように…!」
儚い三日月の下。
たった二人の声が重なった。
色とりどり
飾る花
隣の君は
頬染めて
まるで、桜のようだった
今年の春が、待ち遠しい