微熱だった。
保健室に行って、熱を計る。
ピピピピっと音がして見た。
そしたら、36.9度。
先生も困った顔をした。
頭は痛いし、目も疲れてる。
昨日、彼女に振られたのが原因だったのかな?
それでも僕が微熱だったのは、彼女との愛が微熱だったから?
なんて、何も面白くないよな。
先生の顔を見て思う。
僕って、何で馬鹿なんだろうってね。
太陽の下で
走り回った
何もない、野原で
誰もいない、此処で
何で誰も居ないの?
何で何もないの?
何度も「ねえ」と言った
でも、誰も答えてくれなかった
孤独の私を、誰も知らない
セーターって暖かいよね。
その暖かさは体温なんだろうけど。
でも、心みたいに暖かくなる。
あの子にさ、誕生日プレゼントにセーターもらったの。
白のセーターだった。
あの子からもらえるなんて思ってなかったから、驚いた。
なんか、着る気になれなかったんだけど、あの子がいなくなってから着るようになった。
ごめんなさいとか、ありがとうとか、何も言えずにさよならしちゃったんだけどね。
あの子さ、私の誕生日には必ずプレゼントとお花を贈ってくれるの。
花言葉とか、調べてなかったんだけどさ、この前調べてみたの。
たらね、今年の花の花言葉、「別れ」だった。
だからさ、気づいてたんだって、わかったの。
気づいてたんなら、私の気持ちにも気づいて欲しかったよ。
そんなこと思いながら、私は今日もセーターを編む。
きっといつか、あの子に想いが伝わると願って。
落ちていく
知らない世界に落ちていく
それは、現実なのか、頭の中なのか
よくわからない
お金が落ちていく
現実が落ちていく
夢も落ちていく
恋も落ちていく
人も落ちていく
手から離れて落ちていく
溢れて溢れて落ちていく
ごめんなさいも落ちていく
ありがとうも落ちていく
涙も笑顔も落ちていく
落ちた後は何も残らない
空の抜け殻だけが残っていく
でも最後は
昇っていく
「ねえ、またポケットにティッシュ突っ込んだまま入れたでしょ!」
「あ、悪い悪い、つい癖でさ、ごめん。」
「何回言ったらわかるの?いっつも言ってるじゃん、私だって暇じゃないのにさ!」
「ごめんって、反省してるじゃんか。」
「反省してないから言ってるんでしょ!?」
さっきから怒鳴っているママ。パパはスマホを見てばっかでママのことを見てないんでしょ。私が目を瞑って以来、ずっとそうなの。私はベットの上で寝たフリ。勉強しなきゃな、とか、この前のテスト0点だったな、とか。いつまでもそれだけが頭の中をぐるぐるしてて、なんだかメリーゴーランドみたい。でも、あの乗り物みたいにキラキラはしてないんだよね。
「本当、どうしたらわかるの?大して良い仕事してないくせに、私の気持ちくらい考えてよ。」
ママが呟いた。呟いたというか、呼びかけた。ママはきっと、半泣きでパパを見てるんだろうな。目を瞑ったままの私は、パパがスマホを叩きつける音が嘘のように静まっている。だって話そうにも話せないからさ。
「はあ?俺だって職場で上司に怒られたり、お前に怒鳴られたりして疲れてんだよ!何の権利もいらない家事っていう仕事してるお前なんかとは違って!」
不機嫌に怒鳴り声を発するパパ。お仕事が上手くいかないのはこの環境のせいだと言うんだろう。
「何で私のせいになるのよ!あの子だって育てたのは私よ!ご飯を作ってるのも、洗濯して畳んであげてるのも何だって私がやってるの!」
「あの子のことは俺だって育てたさ!」
「何やったっていうのよ?気持ちだけ?」
気持ちだけ、か。気持ちすらも無いんじゃないの?ろくに愛してもくれなかったくせに。私は知ってる。ママは他の男の人と幸せに暮らしてるのも、パパは仕事がなくなってお薬飲んでるのも。あぁあ、私もこんな大人になっちゃうのかな。今日はいい夫婦の日だっていうのに。
本当、何でこんなにうちの親は、
「最悪な夫婦なの?」