【手紙を開くと】
咳が続いたと思ったら、熱が出た。
はじまりは咳だけだった。
たいして喉に違和感もなく続いていて、
季節柄かななど思っていたら、今日。
今日のサッカー観戦は諦めた。
ゆうべから喉が痛いなぁ、全身の皮膚が痛いなぁと思っていたけど、
発熱を連想していなかった。
そういえば昔、子供のころ、熱が出て寝込むと
天井が近づいてくる現象がよく起きた。
なにかに押しつぶされるかんじ、
説明ができないのだけど、空間が近づいてきて
こわい、気がする。気がする程度。
あまりにわたしが嫌がるから、母に聞かれ
やっとの思いで言葉で表したのは
「男の子たちのきもち」だった。
そんなモテていたのか、私。
羨ましい。
とりあえず眠る。
眠りたい。
【ささやき】
「呼んだ?」
背後から息子が顔を出して飛び上がる
ドライヤーをかけていたので気配に気づかなかった
「…呼んでない」
トイレのドアを開くと目の前に息子が立っていて
ぶつかりかける
「呼んだ?」
「呼んでない」
「お母さんの声やってんけど」
普段、私が呼んだ時はちっとも動かへんやん
誰やねんその声、真似するわ
ほんで怖いねん、その、
近くで「呼んだ?」ってやるやつ…
【未来図】
無理に他人と付き合うことの無意味に
年齢を重ねて気づくことが多く、
離れて、ふりむかず、身軽に生きることを知った反面、
自分以外の判断基準や捉え方を知り、見識を広げ
知った上で、
想像と未来予想をもって、
気遣いと配慮をできる人間になりたいとも心から思う。
そのバランスがむずかしい。
なぜなら、生来がそれをできる人間ではないから。
後何年かかるだろう。
物語も小説も漫画も、
ひとの作り出すものはその人から自由にはなれない。
思考回路、判断基準、決断までの道のり。
自分の中にないものは、別の人間にならない限り作り出せない。
泣いたり悩んだり毒を吐いたり反省したり
想像力と経験で、その限界をこえていきたい。
【すきだよ】
ひとは、自分の世界を持ち歩きたがるものだ
所属しているカテゴリ、いつもの顔ぶれ、
慣れた空気、いつもの人数、
大きければ大きいほど強い存在感を発揮する
そのメンバーである「自分」
羨ましくてじっと観察する
そういう感性を持てることが羨ましい
自分とは違う感性
興味がある、とても
【君と】
①がっかりとかあんぐりとか呆然とか
②なんにも考えられないとか考えたくないとか思い出したくないとか
③猜疑心とか孤独とか傷心とか
④くやしいとかつらいとか淋しいとか
そして同時に負けず嫌いとか諦めとか切り替えとか、未来とか
⑤うつむいた足下に一本の道
⑥君はまた一歩、前に進む
⑦それが正しいのかわからないけれど
⑧そして新しい広場に出る
⑨そこで誰に出会うだろう
⑩君と出会いたい