【日陰】
このことばを見ると、ある理由から小学生の時の担任を思い出す。
物事にはいくつもの側面があるということと、
教師も未熟なひとりの人間であるということを教えてくれた。
その人のことはあまりうまく処理できていないから、まぁいったん置いておこう。
いったん置いて、もう30年は経った。
今は地元で校長をしているらしい。
その学校に娘を通わせることになった幼馴染が教えてくれた。
あーー、へぇーー、そうなんや。
【帽子かぶって】
つま先ちかくに落ちた葉っぱのかけらが
ゆらゆらと揺れている気がしてじっと見る
小人でもいるのかとまじまじ観察する
たしかに揺れているそれを、そっとつまみ上げる
電気ストーブのあたたかな空気の動きに
葉っぱはゆらゆらゆれる
形あるものに落とし込んでいくという作業に
これほど助けられたことはない
ふさわしい言葉を探って文字にしていくと
研ぎ澄まされて冷静さをとりもどす
距離をとって眺め、外郭を把握できたなら、
それに振り回されることはないのだから
あたらしい自分、なんて聞き慣れた言葉に
ハッとさせられるのはまだ先のこと
【わぁ!】
言うんじゃなかった、あんなこと
口から出た言葉はもう取り返せないのに
あんなこと、言うんじゃなかった
思い出して頭を抱える
自分の稚拙さに嫌気がさす
なんて幼いんだろう
なんて馬鹿なんだろう
わぁ!!
そんな夜
【やさしいうそ】
間が持たなくて、言わなくてもいいことまで話しちゃうのが苦痛で…
と、即席の人間関係に疲れた友だちが苦笑いしていた。
あまりに的を射た言葉で、印象的だったから今でも憶えている。いやほんまそれな。
賢くてシンプルなその友だち。
私をもっと好きでいてくれてると思ってたわ。
すこし、あくが強かったですか。
お好みじゃない一面は隠し続けたほうがよかったかな。
微調整もできるけど。あんま好きじゃないフリとか。
いやいや、それだと意味がない。
たくさんあるなかの一部分は、確実に共通していた私たち。
そうじゃない部分に心をゆるすことがなかったから
しかたないよね。お互いに。
【あなたへのおくりもの】
きみのその
澄んだ瞳
正直な指先
誠実な口元
緩やかな肩
強い脚
温かなてのひら
繊細な肌
ふわふわのくせ毛
まっすぐなまなざし
敏感な心
満たす体温
確かにいつかこの地球に存在したはずの
どこかの誰かから受け継がれてきたかけら
なんて上手にまとまってきみなんだろう
それはまさに奇跡、
何億年という地球の歴史上、初めての存在
たまたま隣に座っただけの見ず知らずのきみに
そんなことを思う