【夫婦】
私の母は、夫である私の父を、おそらく、
とても愛していて、とても信頼していて、
とても侮っていて、とても可愛がっていて、
とても愛されたいと思っていて、とても寂しかったと思う
私の父は、妻である私の母を、おそらく、
とても愛していて、とても大切にしていて、
とても不信感をもっていて、とても煩わしがっていて
とても愛したいと思っていて、とても孤独だったと思う
若いころ誰かが言っていた
「すこし前はこっちが冷めてたけど、今はあっちが冷めてる」
「交互なんですね」と笑うと「揃ってしまうと終わるでしょ」と苦笑いしていた
そんなものなのかなと思った
いつまでも男女として愛し合える夫婦関係?
セックスレスはマズい、なんて言われているけど
恋人から、いつしか友人になり、親友になり、同志になり、リラックスできる生活の大切な存在になり
気づけば自分のからだの一部のようになって、
うんざりしたり腹を立てたり、可笑しくて笑ったり、
そしてそこに、性を超えた人生を認め合える、
ほんとうはそういうのがみんなの理想なんじゃないかな
ちがうのかな 私はそうだな
【どうすればいいの】
自分ではどうしようもないことって、あるんだよ。
あなたが頑張っても、変えられないことはある。
何度かチャレンジしてみていい。それでも変わらないなら、その時は勇気を持って手を離すんだよ。
そのうち、何かの力によってあるべき状態に向かって進んでいくから。
ほんとうにそう、あるべき場所に向かって進んでいくから。
【キャンドル】
キャンドルをともす習慣がない。
そういう文化に育っていない。
素敵だなと思うことはある。
憧れて買ったこともある。
探せば家のどこかに
きっとある。
【冬になったら】
空気の冷たさをかんじながら洗濯物を干す
洋服にうでをとおして、くつしたを履くか考える
家じゅうのカーテンと窓をあける
ベッドのクッションとシーツをととのえる
部屋の中におちているものを所定の位置にもどしながら部屋の状態を見てまわる
朝食につかった食器を洗ってキッチンを整理
牛乳たっぷりのカフェオレをあたためる
会話をしながらそれをのむ
そのあいだに窓をしめたり、うさぎをかわいがったり
ベランダの落ち葉を集めたり、もらった大根の置き場所を変えたりする
調理方法を考えたりする
あれこれ思い出しては立ったり座ったり、
家族の予定を確認したり
あらゆることを全部する
一年をとおして、朝にすることは同じ
だけど冬だけは温かいお湯のにおいを思い出す
乾燥をさそうヒーターのにおいを思い出す
すこしだけなつかしい、すこしだけさびしい、
それからすごくやさしい、冬のにおい
【仔猫】
子猫や子犬や子うさぎや子リスや子豚や子山羊や仔象や子マントヒヒや子バイソンみたいな
無条件に愛らしくかわいいものを愛でるとき、私は黙る。集中してしまって、黙る。