【カーテン】
ひとりで暮らし始めた時に使い始めたのは、黄色と白のチェックのカーテンだった。母親が選んだ。
田舎の生まれだった私には気候のいい昼間は窓を開ける習慣があって、風の抜け道、あるいは入り口をつくるために玄関ドアは開けておくというのもまた然りだった。
京都の入り組んだ細かい間取りのなかを、思惑どおり初夏の風がぬける。掃き出し窓のカーテンがゆれる。まだ、京都の夏の暑さを知らなかった頃だ。
床に寝転んで、揺れるカーテンを眺めていた。
ラジオからは、ヘビーローテーションに選ばれた曲が何度も流れて、その歌詞が胸に刺さった。
カーテンが揺れて、メリーゴーランドが回る。
誰のなんという曲だったのか覚えていない。
その続きで流れてきた曲は今でも覚えているのに。
忘れてしまったほうがいいことがたくさんある。
でも、あの曲名は今でも探している。
ずいぶん遠くまできたんだ。
【なみだの理由】
泣いていいよ、
なんて言われちゃって スンっと涙がひっこんだ
経験あるわーって人いる?
私はある
なみだはデトックスで、癒しで、自分への愛の言葉
たまったウミを出したら軽くなって
立ち上がるのだって自分でてきるもん
むしろ、自分で立ち上がるために泣いてるようなものなのだ
泣く時はひとりで泣く、思う存分泣く
翌日目がぽんぽんに腫れても、その理由はだれも知らない
【束の間の休息】
笑うのも怒るのも走るのも、なににもしばられない自由時間がおわって
あたたかく柔らかなベッドのある鳥かごに戻る
街灯もない暗闇が点々とする夜道を
車を走らせるBGMはいつだって休息をくれた
自分を鳥に戻すための2時間
誰のものでもない、でもひとりぼっちでもない、私
ほっ、と息をつく
明日からまた、健気で哀れな美しい小鳥になって
歌ってみせるよ、
それがあなたの安息になるのなら
懐かしい痛み、
縛られること、足枷を嵌められること、
職務を全うしている満足感
【静寂に包まれた部屋】
雪がこんこんと降り続いても、
どしゃ降りで学校が休みになっても、
何も考えられないほどの酷暑でも、
部屋の中は快適です
夕方から夜に移り変わっていくあいだの
陽が沈むときがいちばんしずかです
本を読んでいたのにいつのまにか真っ暗闇、
なんてこともあったっけ
自分のために静寂を使えるということ
実に羨ましい
【別れ際に】
いつでもいい、もういちど会いたくなるような、
どこか記憶に残るような、
ふと思い出してもらえるような、
あなたと会えてよかったと伝わる私で手をふる