【別れ際に】
いつでもいい、もういちど会いたくなるような、
どこか記憶に残るような、
ふと思い出してもらえるような、
あなたと会えてよかったと伝わる私で手をふる
【秋】
秋。
私のベッドルームはいつも秋。
読みかけの本、小さなあかり、あたたかいお茶
クッション、ひざ掛け、やわらかなシーツ
もぐりこんで読書のつづき
眠りへの道、ポプラ並木のようにまっすぐ
わくわくとわくわくの間、
階段の踊り場、
無条件にすすむエスカレーターから
降りてもいいような、
選択してもいいような、
あら、と立ち止まるような
みんなと同じほうへ連れていってはくれない、
私の生まれた秋。
【窓から見える景色】
大規模改修中のマンション
かけられたネットで、ベランダは朝から夜までずっと雨の日のいろ
外れたら雪がふってるかも
それもいいかも
【ジャングルジム】
主人公の兄だったか
そのてっぺんに立って、世界と繋がっていると叫ぶ物語を読んだことがある
精神を病んだ彼はそして
ついにこの世界の成り立ちを理解してしまうのだ
その物語に触れて以来、
ジャングルジムがアンテナに見えてしまう
踏み込んではいけない世界につながっている
【時間よ止まれ】
おとなになると時間が過ぎることのありがたさや残酷さも知って、
時間がすすまないと空気が動かないから呼吸はどうなるのか、止まるのがどの範囲なのか、惑星も止まるのか、重力は、意識は、なんて考えちゃったりして、
だけどそうすると本当にそういうことが起きていても誰も気づかないだろうからひょっとするとあの時お気に入りのお皿をゴミに出しちゃったのも自分じゃなくて誰かがゴミ袋に入れた可能性もあるよね、そうかもそうかも、怖〜
とか
ストップしてしまわなくていいから、
国民的アニメのほとんどがそうであるように、
ずっと、みんなが、今の年齢のままでいればいいのにと思う
あーいや、去年くらいがいいかな
けれど、ほんとうはさ
中学受験で子どもらしい時間を奪われたクラスメイトのなかで、真っ黒に日焼けした我が子の
身の置き所がない毎日が早く終わればいいなと思う
上手いと上手くないのはざまで、
賢いと賢くないのはざまで、
おとなびていると子どもじみているのはざまで、
いちばん自分を定義したい時期の始まりに
どっちにいけばいいのかわからない毎日があっという間に駆け足で通りすぎて
ポッと、あかりがともるといいなと思う
そこに気づけたらいいなと思う、楽しい日々に戻るといいなと思う
あなたの迷いはまちがってないよ
みんなの生活もまちがってないよと話し合いたい
きっと今はまだそのときじゃないけれど