【1年後】
過去の自分を呪って、
自分の稚拙さを悔やんで、
泣きながら思い出を睨みつけ、
最新の情報に更新し、
冷静に、静かに、息を整えて、
見えていないものを保留して
やっと1年経った
1年経ってようやく、愛していたのだと知った
信じていた、おそらく、たぶん、
家族みたいに
それは印籠のように、罪の意識への免罪符になる
ばかなひと
何があったか知りもせず
息絶えるまで赤信号につかまっていればいい
なぜそんな目に遭うのか知りもせず
【日常】
カーテンの外の光で目が覚めたら、
ごはんをたべて、うさぎが後ろあしをぴっと揃えて寝転がっているのを見てニヤニヤする
良い顔面と良いくちづけと良いストーリーを見てたら
スマホが鼻に落ちてきて慌てる
時間ができたら興味深い本を読んだりする
おなじところを3回くらい読んだりする
眠くなったら眠る
もちろん、目が覚めてからうさぎ後ろあしぴっとまでのあいだで仕事もする
夕飯の支度もする
玄関の鍵を閉めたのにくつしたを履き替えに帰ったりする
カラスとか宇宙人について考えたりする
そういうことの間でふっと、君がくだらない連絡をしてくる
バリキャリの表情をつくって、おなじくらいくだらない返信をする
それが日常
【すきな色】
すきな色
晴れた日の夕暮れの白くなっていく空
朝日ののぼってくる山の稜線
空の青を吸い込んだような葉っぱの緑
実はすこし茶色いあなたの瞳
君の腕の焼けたとこと焼けてないとこの境目
誰かのしあわせに思いを馳せる深夜の空の紫
部屋の隅をぼんやり灯すあたたかな橙
ガラスの花びんが西陽をうけてテーブルに落とす青
うさぎの毛一本もついていない黒いスラックス
音をぜんぶ吸い込みながらただただ降る雪
肉球のあずき色、肉球のピンク色、
まぁるいおめめの深い深い赤
男性が身につける桜色、女性の選ぶネイビー
西海岸みたいなブルージーンズ
世界はすきな色であふれてる
【相合傘】
何か新しい扉が開きそうで
勇気がなくて、てれくさくて、
そういう自分がいやで
居心地わるくて
必要に迫られても避けてたな
言葉そのものが感情を持ってることってあって、
あいあいがさもそのひとつ
たぶん、名前がよろしくない
思春期の連想力は、問答無用で
そのなかにLOVEをふたつも見つけるんだもの
相席とか相乗りみたいに
「相傘」と言えばあの傘に入れたのに
など思う
【落下】
落下
って文字を見るだけで、からだのまんなかが震える
ような気がする
前世で何かあったのかな