涼やかな音が響き渡る。
その無垢な高音が耳障りだった。
きみを攫った季節の音なんて、聞きたくない。
—————
風鈴の音
だれでもかんたんにできる、しあわせの手に入れかた。
おふとんに入って、目をつむるの。
そのうち、あたまがぼんやりして、いいきもちになる。
そのあと、たまにね、だいすきなひとに会えたり、だいすきなばしょに行けるの。
おはなしの中の世界にだって、行けちゃう。
ね、とってもしあわせでしょ。
————————
心だけ、逃避行
いつもの道、一つだけ手前で曲がる。
少し小石を蹴ってみる。小さな野花を見つける。
小鳥のお喋りに耳を傾ける。風の噂を聞いてみる。
野良猫にかまってみる。誰かの飼い犬に吠えられる。
空を見上げてみる。好きな形の雲を探す。
息を吸い直して、現在地を確かめてみる。
わたしの足元、見直してみて、後ろを振り返り、来た道を記憶におさめる。
前を向いて、先を見据え、いつもの道に戻り行く。
今日も冒険をした。これからも冒険が待っている。
———
冒険
得ては失い、失いては得て
行き着く先に、風と静寂だけがある
過去の君よ、未来に何色を見たか
———————
あの日の景色
自らのことをば。
叶わない夢を見て、少し無理無茶をしていて、
けれど実現に向かっている。
その先が十中八九、安寧で無いと知ってはいるが、認識が甘いのと、知ってるだけで実際どうなるかは分からないのとで、どこかまだ地に足が着かない。
まだまだ道のりは長いけれど、でもまだ挫けていないから、亀の歩みでもなお進んで行ける。
他者には他者の速度、自身には自身の速度。
他者に愛想を尽かされようとも、足を前に動かしたい。
そして、ここ。インターネットの良いところだけを抽出したような、静かで穏やかな場所。
世の全てがここのように、熱を持った深海であればいいのになと、常願う。
今年も好きなだけ好きな文章を書いた。評価されても、されずとも。
来年も好きなだけ好きな文章を書きたい。自らの心だけを、満たし続ける。
……そうして出来た文章を見た誰かの心が、少しでも何かを得られたら良いな、と。淡い、淡い、望みを持って。
—————————
1年間を振り返る