ねむ

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3/30/2023, 5:13:28 PM

花を一輪、買った。
バラの花。贈り物用のラッピングも、してもらって。
ただ、渡すだけだ。別に想いを伝えるわけじゃあない。
渡すべきその人とよく会う場所で、……ああ、会えた。
その人に声を掛ける。さも偶然会ったように、そして……
「余りなんだ、一つあげる」
花を差し出す。
その人は特に表情を変えることなく、無機質な感謝の言葉を述べて、花を受け取った。
受け取ってもらえたので、自分は別れの挨拶をして、その場を去った。
目的は達成した。
あとはただ、帰るだけだ。

…………

「……バカな人。
 耳真っ赤にして、"偶然"だなんて嘘ついて。
 ……本当、バカで……可愛い」


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何気ないふり

3/30/2023, 8:40:01 AM

胸に刃が突き立てられた。
わたしを必ず仕留めんとする、討伐隊員の必死の形相——これが最期の景色となるのだ。

これで、これで良かったのだ。

世に厄災をばら撒くことで、
その原因たるわたしへ目が向けられた。
そして、分かりやすい悪性存在を前に、人々は団結した。
手を差し伸べ合い、今を乗り切り、奴を討てば必ず救われると。
未だ啀み合う人はあれど、それでも以前よりは良くなった。

だから、これで良かったのだ。

これで世は、良い方向へ向かうだろう。

心残りなのは、その世界の行末を、この眼で見ることが叶わないことだけだ。


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ハッピーエンド

3/28/2023, 1:42:08 AM

みなさまのはーと
「♡もっと読みたい」は
とってもうれしい
たいへん感謝しております
なにも浮かばなかったり
困ったりもするけれど
できうるかぎり
これからも書きたいな


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My Heart

3/26/2023, 2:19:46 PM

全て終わった。夢は叶った。
もう、理不尽な悲劇は起こらないのだ。
その事実を、この空気を。胸一杯に吸い込んで、深く、ゆっくり、吐き出す。
ふと、あの人の顔が見たくなって、懐から写真を取り出す。
そこに写るあの人は、まだ元気な笑顔を、こちらに向けている。
その頬を、指先で撫ぜてやった。
「……あなたにこの景色を見せたくて、頑張ってきたんだけどなぁ」


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ないものねだり

3/25/2023, 6:14:49 PM

「今回も素晴らしい戦果でした。
 あなたがいれば、我々の勝利は確実でしょう。
 これからもよろしくお願いします」
「……はい。皆の、笑顔の為に」

敵の、絶望の表情が。目に焼き付いて離れない。


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好きじゃないのに

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