全て終わった。夢は叶った。もう、理不尽な悲劇は起こらないのだ。その事実を、この空気を。胸一杯に吸い込んで、深く、ゆっくり、吐き出す。ふと、あの人の顔が見たくなって、懐から写真を取り出す。そこに写るあの人は、まだ元気な笑顔を、こちらに向けている。その頬を、指先で撫ぜてやった。「……あなたにこの景色を見せたくて、頑張ってきたんだけどなぁ」————————ないものねだり
3/26/2023, 2:19:46 PM