1つだけ何でも願いが叶うのならば身体も心も記憶も 全て消して
いなくなってしまいたい。
 ̄
物語はハッピーエンドのほうがいいよね
そうだね、悲しいのは嫌だもん
私たちの物語をハッピーエンドにするにはどうしたらいいんだろ
家に帰って2人でコーヒーでも飲んで、
"そして2人はいつまでも仲良く幸せに暮らしました"
めでたしめでたし
っていうキャプションつけたらいいんじゃない?
もっと刺激的でクールなラストがいい
うーん、爆発させるとか?
それはバッドエンドなんじゃない?
じゃあ、一緒に宇宙行っちゃうとか?
唐突すぎない?それにどうやって行くのよ
じゃあ、新たなる旅へ出発だ!!みたいなのは?
宇宙とあんまり変わらない気がするけど
うーん、幸せな最後って難しいなぁ
私は、あなたと一緒なら幸せだけどね
……
なんか言ってよ
ごめん、嬉しさ噛みしめてた
髪伸びたね
いいでしょう、この髪型
綺麗になったね
それは元から
うざ
ん?なんて?
すき
私も
手
ハッピーエンドかな?
私は幸せだよ
じゃあ私も幸せ
。
私は本来、本を読むことが好きだった。
小学生では毎年200冊以上の本を読んだ。チラシや取扱説明書、薬瓶の裏の成分表まで目に入る文字は何だって読んだ。そんな子供だった。
しかしいつからだろうか。本を読めなくなったのは。
本が嫌いになったわけじゃない。
ただ何というか、これはとても面倒なことで、
どうしても本を読むことで何か得ようとしてしまう。
それは、例えば、知識であったり、話題であったり、他にも語彙力、文章力、演技力なんかも。
ただ純粋に物語を作品を楽しめば良いだけなのに。
"良い人間"になりたい
そんな煩悩が邪魔をする。
どんなに素晴らしい本だって、眉間に皺を寄せて読んで
おもしろいはずがない。
あの頃の私は何を考えながら本を読んでたのだろうか。
いつのまにか、つまらない大人になってしまった。
真面目で落ち着いていて大人っぽくてなんでもできる
これが世間一般の私のイメージ
他にも朝に強そうだとか
部屋はいつも綺麗で物も少なそうだとか
なんか勉強できそうだとか
とにかくそんなイメージ。
ほんとの私は
ただ怒られたくないからルールに従って
舐められたくないから落ち着いてる風を装って
とくに面白い事も言えないから言葉数も減らして
TPOをわきまえたそれなりに小綺麗な服に身を包んで
朝起きるのは苦手で寝起きも最悪
余裕を持って家を出れたことなんて一度もない
片付けも苦手で部屋は汚いのがデフォルト
勉強はしないと怒られるからしてただけで好きじゃない
ほんとは私は
いつも元気で愛嬌もあって
困ったときは人に頼ることができて
人と話すことが好きで、人が好きで
表情もコロコロ変わって毎日楽しそうで
早寝早起きで朝にも強くて
要領良くて部屋はいつも綺麗で
勉強はできなくても色々な分野に興味関心を持てる
そんな人がいい
別に、好きじゃないのよ。
ちょっと猫背なところとか
(ゲームのしすぎ!本の読みすぎ!)
首筋にある縦に2つ並んだほくろとか
(あなたは多分気づいていないんでしょ?)
絹のように透き通った肌とか
(スキンケアなんにもしてないんですって、ムカつく!)
私よりいくらか大きい背丈とか
(首が疲れるのよ、まったく。)
キャラメルポップコーンが好きなところとか
(私は塩派なのに!)
超が付くほどのお人好しで損ばかりしてるところとか
(いい加減にしてよね、ほんとに)
私が泣くとすぐ貰い泣きして私以上に泣くところとか
(呆れて涙も引っ込むわ)
ハグするとき絶対に背中をトントンしてくるところとか
(子ども扱いするな!)
無駄にいい声とか
(あなたの声聞くと眠たくなるのよ!)
すぐ頭撫でてくるところとか
(寝てると思ってるでしょ?私、気づいてるからね!)
寝癖が鳥の巣みたいなところとか
(あれはひどい)
好きじゃないのに。
好きじゃないの。
好きじゃないのよ。
好きになっちゃいけなかったの。
好きになりたくなかったの。
ねぇ、
笑ってないで一緒に泣いてよ。