頬杖をついて、数時間
白痴のように、窓をぼんやり見つめる
ここ数日の連雨で、すっかり憂鬱
濡れると冷たくて、重い
一粒一粒が、世界の骸を含んでいるから
気分転換にと、テレビをつける
ドラマに興味はない、暗いニュースは聞きたくない
最後の局をつけると、懐かしい曲が流れて来た
「ピッチピッチ♪チャップチャップ♪ランランラン♪」
長靴で水溜まりを歩いた時の感触
シトシトからザーザーに変わる瞬間
それが楽しくて、雨の国に行ってみたいと言っていた
そんな時期もあったなと思い出した
レインコートと長靴を取り出す
心中に秋晴れを忍ばせ、戸締りをする
題 忘れたくても忘れられない
「彼と初めて会った瞬間、ビビッと来ちゃった」
妹は、そうのろけていた
あれからもう数年、妹はとっくに別れて
今は別の人と結婚した
「ビビッと来た?」と聞いたら
「うまく言えないけど、目を閉じても手を合わせ
られるように、すぐにわかった」
またのろけた。ぷっと吹き出してしまった
可笑しかったわけじゃない、よく似ていたからだ
私が夫と出会った瞬間のように
それ以来、ビビッと来た縁に虚な部分を見出してしまう
春 川に反射した日光
夏 仏壇の蝋燭に灯った火
秋 夜祭の提灯の灯り
冬 家々のライトアップ
やわらかな光は、365日
いつでも、迎えてくれる
プランをもう一度シュミレートしてみよう
まず、サラダで胃の底にクッションを敷き、
次にタン、ロース、ハラミなど
脂肪分の少ない肉でさらに補強する
そして、カルビ、トントロ、ご飯
メインとも言える彼らを一気に平らげる
その後、デザートのアイスでクールダウン
注意点としては、水分を摂りすぎないこと
よし、完璧だ、いざ、決戦へ
昨日から考えた策を携えて
私は鋭い眼差しを彼らへ浴びせ、一歩一歩近づく
料金の元を取れるか否か、火蓋は切って落とされた
バベルの塔
イカルス
シャボン玉
高みを目指し、突き抜けると
このどれかと同じ末路を迎える