「みてみて、これ、覇王線って言う手相なんだって
こんなにくっきりだから、覚醒の日は近いね!」
娘がコーヒーをかき混ぜながら、そんな意味の話をする
生返事しながら、ガラス越しに飛行機ぐもを眺める
今日は残業はなさそうだと言っていたから
6時頃に終わる予定になっている
昔、着てたドレスはクリーニングから帰って来たし
体型もちゃんと戻った。準備は万端!
「そういえば、予約って何時にしたの?」
あ
巡り会えた記念日のディナーは
牛丼になってしまう気がする
・・・またしても
わかっているよ
あなたは、とても深く傷ついている
普通の人なら、立ち上がれないくらいに
救われたかったんだよね、楽になりたかったんだよね
でも、あなたが強いこと
あなたの起こした奇跡は
多くの人達を救う為
あなた自身を傷つける為だと言う事も
わかっているよ
だからこそ、奇跡をもう一度見せて
そして、今度はあなた自身を生かす為に
後ろに流した髪の上に、夕陽が滑っていた
最後に酌み交わした酒と
365日前のたそがれを
グラスに混ぜて一気に呷る
いくら飲んでも、酔いは訪れない
分かち合う相手がいなければ
そもそも唇につけるべきではない
探しに行こう
心地よい酩酊を、共に味わう為に
緋色をまとって
あれ?大丈夫?目のまわりが赤いよ?
もしかして…やっぱりそうなんだ
何となく、彼女のあなたへの態度
前から冷ややかに見えたから
半年しか経ってないんだね
多分、彼女はあなたの良いところを
見つけられなかったんじゃない?
自分の良いところばかり
見せつけようとする人って
まわりどころか、目の前も見えてないから
このまま一緒にいたって、きっと明日も明後日も
一方通行だったと思うよ?
良かったねとも、残念だったねとも、私は言えないけど
あなたが立ち直るのを祈ることは出来るから
思いっきり泣いて、叫んで、吐き出して、
ずっと、私はここで立っているから
題 静寂に包まれた部屋
今、私の部屋は
東は親子の話し声、西は電車の音
南は鳥の囀り、北は犬の鳴き声
それらに囲まれている
静寂からは程遠い
スイッチを切るみたいに
ピタッと止まる瞬間を見てみたい
同時に、日常の音が消える
そしたら、自分はどうなるのか知りたい
そんな、危ない好奇心に掻き立てられる
犬が吠えた。高い声、仔犬が産まれたようだ