いつも自分がビリだった。高いところが苦手で、
それに、毎日眠る二段ベッドの上を
想像してしまう。目を閉じただけで
今日と言う日が古くなっていく感覚が
子供ながらに怖かった
時間が経つうちに、その記憶も古くなり
忘れかけた頃、昔の私が登っていた
違うのは、自分の子供だと言う事
足が震えながらも、登りきり
他の子の足をつかんで脅かしてる
「またあした!」と言って手を振り
自分に気づいて駆けてくる
「ジャングルジムの頂上って高いよね。
でも、町を見下ろせるから面白いよ」
と無邪気な笑顔で言う
恐怖を頂上に置いて来たみたいに
「そう」と素気なく応える
内心悔しかった、そして言えなかった
一度も、登りきった事がないなんて
歩いた先々で曼珠沙華が咲いている
昔、家族で見に行った川原を思い出す
赤い花たちに囲まれて、一輪だけ
白い花が咲いていた
火炙りされたジャンヌダルクの絵を思い浮かべた
今日は、逆転している
いちごのショートケーキ
自身の中で、真っ先にそんな声が聞こえる
帰りに買って帰ろう
ふぅ、ん?別に、
なぜか悲しい、そう思っただけ
心が痛みのようにじーんとしていて
それがずっと続いている
理由も解決法もわからないんだ
そう、君もなんだ
じゃあ、気分転換にどこかに行かない?
美術館はどう?きみの好きな画家の展示あるよ
は?いや、別に問題ないけど
はいはい、それじゃ、待ってるよ
心がじーんとする
でも、これは
冷えた身体が温まっていくのに似た
満たされていくような、くすぐったいような
そんな気持ち
えっ?なんか変なこと言った?
曼珠沙華ってかわいい花だよねって
言っただけなのに
じゃあ、君はどう思う?
不気味?毒々しい?怖い?
そう、そうなんだ
あの子達の可憐さがわからないんだね
さようなら
大事にしたい、そう思ってたのに...
おいで、かわいい君たち
わたしの中に
時間を戻せるなら、学生時代
時間を早められるなら、次の大型連休一日目
行きたい時間はあるけれど
止めたい時間はない
生き物も機械もただのかたまり
水と氷の境が曖昧になる
引力と無重力が死ぬ
でも、自分もみんなも全て
一個の美術品に昇華してみるのも良いかも
というわけで、時間よ止まれ