花珠

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9/2/2023, 8:53:20 AM

【開かないLINE】
※尻切れとんぼ

「ん...、」
けたたましく鳴る携帯の音で目が覚めた。
朝。携帯から鳴る音。目覚ましをスマホでやるタイプか、と思うだろうがそうでは無い。
携帯を振動させているのは緑のアイコンでお馴染み、「LINE」である。なにせ音が「ピコピコッ」なのだから、間違いない。
誰だ、朝からこんなにもメールを寄越すやつは。モーニングコールなど頼んだ覚えはないぞ。...頼む相手もいないが。厨二病かコミュ障か、それともその両方かを拗らせて高校デビューを迎えた私には、クラスラインの通知をオンにするなどという生ぬるいことはしていない。さて、誰なのか。
はあ、とため息をついて、通知の元凶を探るべく「158件の通知があります」と淡々と書かれた文字をタップする。
FaceIDが反応しないことで自分の寝起きの顔面崩壊具合を確認して、下がりつつあった私の機嫌はさらに下がるばかりだ。
誕生日だとかいう打つ度にガバガバだと思うセキュリティを突破して、LINEのパスワード画面に移った。またしてもFaceIDが使えないなどとほざいたスマホに、しぶしぶパスワードを打ち込む。

「...」
打ち間違えた。
「...」
ん?
「...」
...
「あ"ぁーーーー!!!なんっで開かないんだよ!!!」
計4回だ。4回だぞ?3、4回目は慎重に1文字ずつ入れた。

...落ち着け私。ここでまず疑うべきは、打ち間違いでは無い。私の認識しているパスワードとこの憎むべきグリーンの連絡アプリの認識しているパスワードが異なることだろう。
そのうえで、可能性その1。私が自らパスワードを変更し、それ自体を忘れている。...まあ無い訳では無いのだが。こちとらピチピチ15歳。所謂JK。痴呆症という判断を自分で下すのは屈辱的。流石に否定したい可能性だ。まあ真面目に言ってもこれはない気がする。
可能性その2。誰かが故意的にパスワードを変更した。もちろんこの可能性には、「誰が」という問いがまとわりついてくる。なお、心当たりは無い。言っただろう。コミュ障をこじらせすぎたんだ。それを忘れたというのなら、君に痴呆症の名をやる。
可能性その3。バグ。1番めんどくさくないようで最もめんどくさい選択肢。正直これで合ってはほしくない。
私の貧相な思考回路では、このくらいが限界である。1番可能性があるのは残念だが3といったところか。