記憶のランタン_____。
ひとつ。
ふたつ。
みっつ。
消えていく。
ひとから貰ったあたたかさで灯したあれも。
自分の心の熱さで灯したあれも。
楽しい思い出の余韻で灯したあれも。
張り切った残り火で灯したあれも。
ぜんぶ。
ぜんぶ消えていく。
徐々に力を失っていくもの、突然に途絶えるもの、さまざまだけれど。
私には何も残らない。
また大切なものを失って。
また大切なひとを失って。
また自分を見失って。
自分の姿さえ、世界に見当たらない。
失っていくものばかりに気を取られて。
なんなら失ってしかいなくて。
ここしばらく何してたんだろうって。
あーあ、
割れちゃった。
どうしてこの世界は_____
大丈夫だよ。
その無責任な笑顔に吐き気がする。
それでもこの世界は終わらない。
頑張って。
その無自覚な嘲りに怒りが込み上げる。
それでもこの世界は終わらない。
ひとつの命も大切に?そんな馬鹿な。
ひとりが苦しんだって、なににもならないくせに。
都合のいい理ばかりを貫いて正義のヒーローにでもなったつもりなのだろうか。
まあ、ある意味それもひとりの人生。
どうしてこの世界は。
水たまりに映る空_____
湿った空気がぴとりと肌にひっついた。
今日の晴天ですっかり忘れていたが、そういえば昨日は雨だった。
いつも通りの帰路、地面に生まれた水たまりを覗けば日が伸びたなぁ、なんて実感する。
明日も、明後日も、同じような日々が続いていくのに、季節の変化を感じては決して同じような日々ではないのかもしれないとも思えた。
もうすぐ梅の時期。
梅の実が熟す時期。
その頃にはどうやら雨が降るらしい。
雨は特別好きじゃないけれど。
雨の匂いは嫌いじゃない。
梅の匂いは好きだけれど、雨の匂いで掻き消されるから雨は好きじゃない。
空が滲んだその時に、私は何を思うのか。
風が歪んだその時に、私は何を誓うのか。
雫が沈んだその時に、私は何を願うのか。
sweet memories _____
電車と先輩と。
高校時代のある年のゴールデンウィークのお話。
世の中の多くの人が連休も半ばだというのに。
今日も私は部活。
しんどいなぁ、なんて考えていつも通り電車に乗った。
当駅始発の電車に乗りこんで、溜まった連絡を返しながら発車を待つ。
すると おはよう なんて聞き覚えのあるトーンで声を掛けられた。
スマホから目を離し顔を上げると、大好きな先輩がいた。
喉の調子が悪いながらもなんとか声を絞り出し、返答する。
そのまま空いていた私の隣の席に座った。
私は先輩にとってはただの後輩。
わかってる。
話しかけるとニコッと
春恋_____
淡くて甘いかおりが広がる季節。
新鮮だからこそ、どきどき、わくわく、そわそわ。
何が理由でうるさいのか。
左胸が落ち着かない。
まあ、季節を言い訳に話せるならなんでもいいのかも。