NoName

Open App
2/12/2024, 10:53:06 AM



「伝えたい」


伝えたい
どうにかして

発煙筒を使おうか

伝書鳩を飼い慣らそうか

瓶に忍ばせて流してみてはどうか

長らく押し黙ったままの
一枚の皮でくっついた唇を
上下に引きはがし
地鳴りのような声を発した

地平線に消えようとしていた
君が振り向いた



11/7/2023, 8:14:17 PM


「あなたとわたし」

あなたとわたしは並んで歩く
あなたはすこし先を急ぎ
わたしは足を早める

あなたの瞳にわたしが映る
あなたの欲しいものが
わたしにはわかる

あなたにあげる
すべてをあげる
わたしのすべて

でも
ただではあげない
ご褒美はそのあと

まて
おすわり
おて

よろこびの抱擁
波打つ被毛
わたしの瞳にもあなたが映った


7/18/2023, 8:29:37 PM


「私だけ」

自分だけ成功したと思ったら
間違いなのだ
他の誰かも大海原の荒波にうまく乗っているのだ

自分だけ苦境におちいると嘆けば
それも違うのだ
皆も大流の川底に頭を打ちつけているのだ

うん うん
そうだ
そうなのだ



6/25/2023, 8:08:24 PM



「繊細な花」


瑠璃の花弁は
ぽんと火が付き燃えて消えた

金色のシべは
灰となって雨に流れた

茎の柱がぱたりと倒れ

香りの記憶が
蝶をまどわせた

3/2/2023, 9:12:55 PM


#たった1つの希望


たったひとつの希望をにぎりしめ
前へ前へと歩いてきたけれど

泥のよどみに足をとられ
生い茂る木枝に髪をつかまれ
とうとう先へ進めなくなった

つま先から硬化して
腹から胸へ まつげの先まで
灰色の石になった

何度も日がのぼり
また沈み 星がまたたき
雨にさらされ 風も吹いた

手には
赤々と光り熱を放つ
ルビーをにぎりしめていた

Next