【あたたかいね】
「うぅ〜…さむ〜」
『部屋が暖まるまでの辛抱だ。もう少し頑張れ』
この地域は雪が特別多いわけではないが、
それでも夜は十分すぎるほどに冷える。
『ほら。ココアでいいんだろ?』
「うん、ありがとう」
ブランケットの隙間から、マグカップに手が伸びる。
大きな繭玉のような彼女の隣に腰を降ろす。
「はぁ〜…あま〜い」
『本当に甘いな、これ』
「あれ、コーヒーじゃないんだ」
『たまにはな』
隣に並んで、色違いのマグカップで、同じ飲み物を飲む。
甘く温かい空気が漂い、気も緩んできたころ、
左側に重みと温もりを感じた。
「…ねぇ」
『ん?』
「あったかいね」
『そうだな』
【君と一緒に】
『あれ、お疲れ』
「おう、お疲れ。やっぱりお前もいたか」
『うん、いた』
「…いつまで驚いてんだよ」
『いや、だって…。なんで?』
「都合がついたんだよ」
『そっか…』
『…よかった』
「ん?なんだ?」
『いや?何も?』
また、君と一緒にいられる。
また、君と一緒に頑張れる。
『本当に、よかった』
【新年】
「お、日付変わったな」
『ほんとだ』
『明けましておめでとう』
「おめでとう」
「今年もよろしくな」
『今年だけ?』
「…来年も、ずっと…」
『…へへ』
「言い出したお前まで照れんなよ」
『なんで、いいじゃん』
『改めて、よろしくね』
「…あぁ、よろしくな」
【良いお年を】
「「「「お邪魔しまーす。」」」」
「おう、入れ入れ。」
「わぁ〜懐かしいな〜。」
「あ!これ、この間使ってたやつのセットですよね!すげ〜!」
「あれ?他の先輩方はまだ着いていないんですか?」
「あぁ、それがな…
一度来てはいるんだが、また出かけちまったよ。」
「あー…。」
「相変わらず自由な人たちだな。」
「まあでも、そろそろ戻ってくるだろう。
さ、セッティング手伝ってくれ。」
「「「「はい。」」」」
―――
「ただいまー!」
「みんな揃っているな。」
「あ、お帰りなさい!」
「お久しぶりです、先輩。」
「ああ、元気そうでなによりだ。」
「すみません、私までお招きいただいて…。」
「なに気にするな!多い方が楽しいだろ?」
「ありがとうございます。」
「そうだぞ、俺たちに遠慮はなしだ!」
「あのなぁ…ここは俺の家だってこと、忘れんなよ?」
「ちゃんとわかってますよ。」
「ああ、みんな承知の上だ。気にするな。」
「先輩まで…。」
―――
「あれ、もうこんな時間だ。」
「ん?あぁ、本当だ。」
「あっという間だったな。」
「じゃあ、俺はそろそろ…。」
「あぁちょっと待て。
…これ!お前たちに早めの福袋だ!」
「え?」
「俺たちに?」
「明日も仕事の2人に、私たちで用意したのだ。」
「「ありがとうございます!」」
「明日開けようかな。」
「な、福袋だもんな。」
「もったいなくて開けれない、とか言うんじゃないぞ。」
「ちゃんと開けます〜!」
「おい揉めるなよ…。行くぞ。」
「気を付けてね〜!」
「仕事頑張れよ!」
「はい、ありがとうございます!」
―良いお年を!
【1年間を振り返る】
この1年は振り返るまでもなく、
充実していたとは言えない。
仕事どころか、プライベートもボロボロで、
このままダメになってしまうんじゃないかと思っていた。
それでも、生きてさえいれば
何かしらの転機に巡り合えるようで、
あるクラブ活動を始めてから、私は活力を取り戻した。
この活動を通して、偶然アナタを知った。
一方的にではあるけれど、アナタを知って、
私の心に、彩りが戻ってきた。
アナタに憧れて、もっと成長したいと
前向きになれた。
まだまだアナタには及ばないけれど、
少しでも近づけていたらいいなと思う。
今年、アナタと出会えて、本当に良かった。
直接伝えることはできないけれど、この世に生まれてくれて、
ありがとう。