目が覚めるとそこは海辺で
次に目が覚めるとそこは高速の高架下で
その次に目が覚めると
そこはどこかの知らない土地で
何度目が覚めてもそれは夢の続きのように
僕らを困らせて
どこへ行っても異邦人で
誰と逢っても他人みたいで
どうしようもなく悔しくて
打ちひしがれて
それでも眠るしかない夜
朝は苦手だ
だいたい調子が出ない
だけど休みの日は別だ
窓の外にも希望が溢れる
カーテンを開けて
光を取り込んで
コーヒーを沸かしたら
今日は始まる
子どものままでいられたら
よかったのか
限られた自由と、限られた空間と
果てしのない愛情の中で
右も左もわからずに
守られていることも知らずに
ただ毎日が新しく毎日が楽しい
それがどんなに尊いことなのか
脆くて儚いことなのか
気づいた時には
僕はもう大人になっていた
自由は限りないものになり
世界は広がり続ける
その中で少しの愛情を糧に
いつも何かを選択しながら
誰かを守っている
その誰かの中には
僕自身も含まれている
物語は章を重ねるごとに膨らんで
やがて小さな宇宙になった
ときどき宇宙でひとりぼっちな気分になる
どうして僕は生まれてきたのか、と
ふと思う
僕はこのままでいいのかと考える
僕はこのままでいいのか
僕は草の上には寝転がれない
だからアスファルトか砂浜に寝転ぶ
アスファルトはたいてい暖かい
砂浜はその時々で違う
あったかい時も冷たい時もある
寝転がると空しか見えない
流れる雲はどこへ行くのか
南風に吹かれたら北の方へ
西風に吹かれたら東の方へ
雲の行先はいつも風が決める
風に抗うと雲は消滅する
そこには青空しか残らない
新たな風が吹いて
また新たな雲がやってくる
今度はどこへ向かうのか
みんなどこへ行くのか
風に乗れるものは
海を渡って、どこへいくのか
異国の砂漠を抜けて
世界の先端をも超えて
宇宙の入り口から
誰にも解らないところまで
そんなに遠くへ行ったとして
君は君でいられるのか
僕のことを覚えていられるのか
もっと手前でいいんじゃないのか
房総半島の海岸はきれいだ
ひとけのない砂浜には
あらゆるものが落ちている
君のよく知っているものも
初めて見るものも
宇宙の欠片だってあるかもしれない
それでも君は遠くを目指す
君は風に乗れる者だから
例え僕のことを忘れてしまっても
風が吹いたら行ってしまう