「鳥かご」
私は外の世界のことを知らない。
外の世界の景色はみえる。
でも、どういうところなのか知らない。
誰も外の世界のことは教えてくれない。
聞こうとすると嫌な顔をされてはぐらかされる。
まるで、鳥かごの中にいるみたい。
私は外の世界が気になる。
みた感じだと、とっても楽しそう。
キラキラしてて、明るくて、ポカポカしてて。
外の世界に行きたい。
どんなところか分からないけれど、ワクワクする。
どうすれば行けるのかずっと考えていた。
ある日、ドアが開いていた。
ここから、外の世界に行けるのではないか。
行ってもいいのかな?
ちょっとお散歩するだけ。
私は外の世界に飛び出した。
出た瞬間、見知らぬ人に踏み潰された。
ぐちゃぐちゃになった。
見知らぬ人はコチラを一度も見ずに去っていった。
外の世界は、思ったより明るくなかった。
キラキラしていない、暗い、ポカポカしていない。
どうして、誰も外の世界のことを教えてくれなかったのか、いま分かった。
あそこにいれば、こんなこと知らずに済んだ。
あそこにいれば、ぐちゃぐちゃにならなかった。
私は愚か者だ。
鳥かごの中にいれば、幸せだったのに。
助けて...。
ここで、目の前が真っ暗になった。
「花咲いて」
ぱっと花が咲いたように笑うキミ。
カスミ草みたいな笑顔だね。
素敵だよ。
僕、なにかしたっけ?
...あぁ、僕もキミに感謝しているよ。
キミは色々な花みたいな表情をする。
おや?
ホオズキみたいな笑顔をしてる。
...無理してないかい?
僕でよければ話してごらん。
自分に嘘をつかないで。
どんなキミも僕は受け入れるよ。
色々な花みたいな表情をするキミが大好きなんだからさ。
「もしタイムマシンがあったら」
タイムマシンがあったら、過去や未来じゃなく並行世界にも行けるのだろうか。
いじめられなかった世界線。
第1志望に受かった世界線。
今でも忘れられないあの人と結婚した世界線。
もし、行けるのなら今の世界線から抜け出したい。
もうこんな人生嫌だ。
並行世界にいる自分を殺して、今度こそ人生を謳歌するんだ。
幸せになりたい。
『ないものねだり』
「あの子のペンケース可愛いなぁ、欲しいなぁ」
「あいつ、1年なのにレギュラーに選ばれたんだって。俺もあいつみたいな才能欲しいよ」
「なんであの人にはスパダリな彼氏がすぐできて、私はまだひとりも彼氏ができないの?あの人みたいにモテたい」
......
他人のいいところがいっぱい見えてしまう。
あれもいいな、これもいいな。
ないものねだりしてませんか?
...ここだけの話、あなたにもいいところがいっぱいあるんですよ。
知ってました?
それに...あなたのことを羨ましく思っている人がじつはいるんですよ。
たまには自分のこともみてあげてください。
今まで気づかなかったいいところ、誰かが欲しいと思うようなところ、案外あるものですよ。
「透けて香る名前」
「名は体を表す」だの、「親がこういう子に育って欲しいという願い」だの言うが、私はこの名前が嫌いだ。
私はこの名前みたいに可愛くない。
私はこの名前みたいに魅力がない。
でも、あなたに出会ってからはこの名前が好きになった。
「ぼく、名前好きですよ。名前の通り可愛いし、色々な魅力があって。」
「あと、香りも好きですよ、香(かおる)さん。」
...香り?
変な人。
でもあなたの透けるくらい純粋なところ、好きだよ。
透(とおる)くん。