あたしは、ずっと望んでた。
この街が幸せで満ち溢れること!
たくさんの人が、声が、笑顔が行き交って
ものすごい活気で
カラフルに染め上げるの
でも、
あたしは、ずっと知ってた。
そんなこと、叶わないってこと!
たくさんの人が、罵声が、涙が行き交って
悲しみと苦しみで
汚ったなく染め上げるの
あたしは、今日も見ている。
この街の行く末を
遥か遠く、誰の手も届かないところで
〜街〜
そんな言葉、聞きたくない
「ごめんね」なんて、聞きたくない
私のプリン食べたから、
皿洗いとか洗濯とか面倒臭いから、
他の女と一緒にいたから
「ごめんね」、そんなんじゃ済まない
最後なんて、
特に。
……でも、私も私
こんな奴に惚れたんだから
こんなろくでもない。
だから、
「ありがとう」の一言くらい、いいじゃない
〜「ごめんね」〜
どこまでも澄み渡る青に、キラキラ輝く太陽。今日は絶好のお散歩日和! ということで僕たちは家族で近くの公園まで遊びに来ていた。休日ということもあり、子連れの親子がたくさんいる。僕たちはお昼ご飯も兼ねて、空いているベンチに座って、今朝作ったおにぎりを食べ始めた。
「今日晴れて良かったな」
「うん、そうだね。特に肌寒くもないし、ちょうどいい天気だよね」
「んっ! まぁま、このおにぎり、おいちぃ」
僕の膝の上に座っている愛おしい我が子は、嬉しそうに足をバタバタさせた。そしてまたもう一口、もう一口と少しずつ食べ進めては、美味しそうに顔を綻ばせる。僕たち二人はその様子を見て、思わず笑ってしまった。しばらくしてご飯を食べ終わり、談笑していると、息子が何かを発見したように指を指した。
「ぱぁぱ、まぁま! にゃんにゃんいるぅ」
「ん……? あ、ほんとだね」
公園の端の方に立っている大樹。その下に丸くなっている猫がいた。息子は目を輝かせて、キャッキャとはしゃぎ出した。そして「みたい、みたい!」と興味津々に何度も繰り返した。僕と彼は顔を見合わせて頷き、猫を刺激しない程度まで近づき屈んだ。近くで見てみると、毛並みが綺麗に整っているのが分かる。それから、すやすやと気持ちよさように寝ていた。僕は小声で我が子に話しかける。
「……ねこさん、ねんねしてるね」
「うんっ、ねんねしてる……しーするっ。あっちであそぶ〜」
人差し指を口元へ持っていき、もう一度静かにしーっと声を出した後、小さな手で、ばいばいと手を振った。そしてくるりと後ろを向いてよちよちと向こうへ歩き出した。僕たちも追いかけようとした時、ピクリと黒猫の体が動いたのに気づく。ゆらりとしっぽをひと振りし、ゆっくりと体を起こした。くしくしと顔を擦ったあと、軽やかに鳴き声を上げた。
「わ、ねこさん、起きたよー……って、もう二人とも向こうの原っぱの方行ってるのか」
子供が地面に生えている草花を見て手を叩き、彼は穏やかな顔つきでそれを見つめていた。それを見て自分も微笑ましくなる。僕もそっちへ向かおうと立ち上がった。だが意外にも怖がっていないのか、僕の足元に猫が擦り寄ってきた。遊んでほしそうに、構ってほしそうに甘えた声で鳴いてくる。金色の瞳が一直線に僕のことを見上げて、脚に尻尾までゆるく巻き付けてくる。何だか謎に惹き込まれる感じがして、その姿から思い浮かぶのは、彼としてる時――って! なんてことを考えているんだ僕は! 思い切り頭を振り、改めてこの子に向き合った。少し戸惑いつつも、再びしゃがみこみ、ゆったりと微笑んだ。
「僕でよかったら、一緒に遊ぼっか」
それからほんの一時、僕はこの黒猫と戯れていた。ねこじゃらしを使ったり、木陰から出て日向ぼっこをしたり。何だかんだで僕も一緒に楽しんでいると、急に猫は僕の横を通り過ぎて行った。軽快にステップを踏むような足取りで。
「あ、あれ? どこに行くの?」
呼んでも足は止まらない。僕はそのあとを付いていくように歩みを進める。案内された場所は二人がいる原っぱ。息子はどこかソワソワしている様子で手を後ろに組んでいる。一方で彼は優しい眼差しで見守っている。僕は不思議に思って二人を交互に見つめていると、彼がひょいっと子供を抱きかかえて、「ほら」と小さく囁いた。その瞬間、ちらりと手から覗かせたもの。それは。
「……まぁま! いつも、ありがとっ! だいちゅきっ!」
子供の温かな言葉と共に渡されたのは、シロツメクサの花冠と、控えめなたんぽぽの花束だった。驚きと感動のあまり呆気にとられていると、今度は彼が僕の頬にキスしてきた。先程の驚きと感動に、羞恥心がプラスされる。色んな感情が混ざり、一気に顔が火照っていくのを感じる。
「へっ……!? ちょ、なにっ……!?」
「ふふ、サプライズ成功だな」
「やったぁー!」
二人は嬉しそうに笑い、息子に至っては手を鳴らして大はしゃぎしていた。僕は未だに状況を飲み込めないでいると、彼は楽しそうに話し始めた。
「俺がここに咲いてる花見せてた時にさ、『まぁまにこれ、プレゼントしたい』って、熱心に言ってたんだよ。この花束は子供から、冠は俺からだよ。全ての花を厳選したのはこの子。ちょうど猫と戯れていたから……サプライズってことで、日頃の感謝の意味も込めて、な?」
「きゃは! まぁまにも、ぱぁぱにもちゅー!」
息子が元気よくそう言うと、彼は反対側に回り、逆頬の方にキスさせた。どくん、どくんと心臓が跳ね上がる。自分の心が幸せで満たされていくのを感じる。ポカポカと体の奥底がふんわりと温かくなってくる。僕も伝えたい。言葉にして。
――こちらこそありがとう。これからも、よろしくね。
〜(別のお題です)/オメガバース〜
得体の知れない甘酸っぱい果実
口に入れたら酷いくらい甘くて
噛むと苦味と酸味が襲いかかる
喉元過ぎても嫌な味は漂ってる
そんな一日があった
得体の知れない感情は少しして崩れ去った
たくさんお話して目で追うまでは甘かった
だけど君には大切な人がいるって分かった
突如重い苦味と強烈な酸味が僕を苦しめる
そんな時もあった
でも今は、
毎日が満ち足りるくらい幸せなんだ――!!
とろトロに蕩けきった君の甘美なる顔
そこに苦ミも酸ミも全クない
骨の髄まで愛してアイシテ愛情をたっぷり注いで
「相思相愛」、ハッピーエンド
……って、ことにしておいてくれ。
~初恋の日~
透明なな空間が
鮮やかな虹色に染まる瞬間
あたしは、
ちょっぴり
いやになった
見えない色が見えてくるのは楽しいこと
でも
見えない方がいいことだってある
純粋無垢な
何も知らない方が
幸せだってことも
ある
〜カラフル〜