今日、私宛にこんな手紙が届いた。
『何事にも流されちゃダメ。ちゃんと、自分の意思を持って生活することを心がけてね。必ず、重大な選択をする時が来るから……』
というたったの三文。しかも、誰から来たのか分からない。差出人不明だ。というか、今の私の状態、見透かされてる……?怖すぎだ。
私は気味が悪いと感じ、ゴミ箱に捨てようとした。だが、
「……でも、すごく大事なことが書いてある気がする。一応取っておいた方がいいかな」
私はゴミ箱から離れ、自身の机へと向かう。そして、引き出しの中に、そっとしまった。
〜10年後の私から届いた手紙〜
私は真っ先にあの人達に渡した。
自身の手作りチョコを。
次元を超えて。
……いや実際は、
フィギュアとアクリルスタンドに向かって「あげる」って言ったんですけどね。
もちろんリアクションは返ってきませんよ。
ずっとこっちを見て微笑んでくれているだけです。
ですが、心で感じ取るんです、心で。
周りから見たら「わぁ……」って思うかもしれませんよね。
自分自身も初体験でしたよ、こんなの。
びっくり。
でも、それだけ、あなた方に強く惹かれているんです。
〜バレンタイン〜
自分は、まだ子どもで幼いのに、大人のあなたに恋をしてしまいました。
待っててください、すぐに大人になって、あなたに告白してみせます。
自分は大人になりました。無事、あの人とお付き合いすることができました。今日は初デート。
待ってて、今すぐ行くから。
自分は一児の母になりました。あら、もうこんな時間。
待っててね、今迎えに行くからね。
そして、あなたも。
自分はおばあちゃんになりました。子は今でも元気に育っています、頑張っています。ですが、あなたの様態はだんだん悪くなっていきます。
もう少し、もう少し待っててください……せめて、この子の晴れ姿を見るまでは、一緒に生きててください。
〜待ってて〜
伝えたい。
私のお腹の子に。
みんながたくさん待ってるんだよって。
早く生まれてほしいって。
楽しみにしてるって。
もちろん、私も思ってる願ってる。
だから、無事に産まれてくるんだよ――
〜伝えたい〜
私は今日、
この思い出の詰まった場所――いや、校舎で、
鳥になる。
……あ、いや、リアルの鳥じゃないよ?
私自身、そんな羽ばたける人間じゃないから。
あーあ、ほんと、ここにはお世話になったよ。
もう廃校舎だけどね。
今、あいつら何してんだろ。
私の顔見て、陰口言って。
私の物隠して、壊して、散々笑って。
……あぁ、時には、校舎裏で脅してたよね。
『お金ちょーだい』って。
今も誰かにそんなにくだらないことしてんのかな。
まぁ、今の私にとってはもうどうでもいいんだけど。
もう、この世から消えるんだし。
バイバイ、ほんのちょっとの私の友達。
じゃあね、私を育ててくれた校舎。
私は屋上から飛び立つ。
そして、雲ひとつない大空へ……
〜この場所で〜