心臓も、気持ちも、全部ハートと言える
__のHeartはどこだろう
迷い、諦め、環境など真っ直ぐにはいられない
そんな時も必ずどこかである
そんな人生をテーマにした話。
__の生き方は自分で決めるし、
責任も自分にある
他人にとやかく言われても、
決めるのは自分だ
でも周りの人の意見に流される、
もしくは流されそうになることもたくさんある
こうしている今も他人の意見に
流されているかもしれない
それに気づけることもあれば、できないこともある
「浮ついている」という言葉を知っているだろうか
個人によって解釈は変わるかもしれないが、
__は心が、気持ちが浮ついている、と
表現していると思う
つまり、気持ちという物体が地面などから
離れている状態を指していると考えた
進路など自分の将来を考える時どうするべきか
悩むのは当たり前だと思う
相談したり、経験談から学んだり、
やりたいことから考えるなど人それぞれ手段がある
やりたいことがあるならそれに向かって進めばいい
〈君〉が望む未来に行けるのはただ1人、〈君〉だけだ。
自分が描いた未来が簡単なものでなくて、
しんどいことがたくさんあって、
逃げ出したくなって、
そんなことが何十回、何百回、何千回とあるでしょう
楽しいと、胸を張って過去の自分に言えるように、
これからを頑張ってください
『○○のそれよくない?』
『△△の羨ましい〜』
そんな言葉を日常でよく聞く
いわゆる【ないものねだり】だ
__だって羨ましいと思うことはある
〈君〉に羨ましい、
なんて何回も言われたし、自分も言った
砂時計が落ちきるその時までが人よりも自分は短い
だからこそ他人が羨ましいと思う
__よりも長く生きられるのだから。
自分が持っていないもの
それを羨ましいと思っても
相手が持っていても嬉しいと思っているかはわからない
例えるなら
パーマが羨ましい人とストレートが羨ましい人だ
お互い羨ましいと思っていてもメリット・デメリットがあるし
羨ましいと思っていても自分が得られないかもしれない
そんなことがあっても願うのは人の性だろうか
夜の街は、どこも乾いていた。
アスファルトも、ネオンも、
全部がきれいに光を跳ね返している。
「降らないね」
__が言うと、〈君〉はグラスの氷を軽く揺らした。
「うん」
短い返事。
その音だけが、やけに澄んで聞こえる。
小さなバーのカウンター。
__と〈君〉の間には、指一本分くらいの距離。
近いのに、触れない距離。
「天気予報、外れたね」
__が続ける。
「“ところにより雨”って言ってたのに」
〈君〉は、少しだけ笑った。
「外れてないよ」
「え?」
「ちゃんと降ってる」
その言い方に、少しだけ引っかかる。
「どこで?」
聞くと、〈君〉はグラスを持ったまま、少しだけ視線を落とした。
「見えないところ」
昨日と同じような言葉。
でも、意味が違う気がした。
しばらく沈黙が続く。
店内には、静かな音楽と、
遠くの会話のざわめき。
「ねえ」
〈君〉がぽつりと口を開く。
「人ってさ、どこで泣くと思う?」
唐突な質問。
でも、今はそれを唐突だと思えなかった。
「家とか?」
無難に答える。
〈君〉は首を横に振る。
「もっと、ばらばらだよ」
グラスの縁を、指でなぞる。
「電車の中とか、夜道とか、誰もいないキッチンとか」
その一つ一つが、やけに具体的で。
「同じ時間でも、同じ場所でも、
泣いてる人と泣いてない人がいる」
そこで少しだけ言葉を切る。
「だから、“ところにより雨”なんじゃないかな」
胸の奥が、少しだけ重くなる。
〈君〉は、やっとグラスを置いた。
そのとき、気づく。
〈君〉の目元が、少しだけ濡れていることに。
でも、泣いているようには見えない。
涙は落ちない。
ただ、そこにあるだけ。
「……降ってるじゃん」
思わず、そう言ってしまう。
〈君〉は、少しだけ驚いた顔をして、
それから困ったように笑った。
「見えちゃったか」
その言い方が、やけに軽くて。
「なんで隠すの」
聞いたあとで、少しだけ後悔する。
〈君〉は少し考えてから、答える。
「濡れると、困る人がいるから」
「誰が?」
少しだけ、間が空く。
—
「たぶん、」
その答えは、思っていたよりも静かだった。
__は、何も言えなくなる。
〈君〉は、目元を軽く拭う。
でも、完全には消えない。
まるで、降り止まない小さな雨みたいに。
「ねえ」
〈君〉が、少しだけ顔を上げる。
「もしさ、」
言葉を選ぶみたいに、ゆっくり続ける。
「誰かが気づいたら、その雨って止むと思う?」
分からない。
でも、黙っていたらいけない気がした。
「……分からないけど」
「少なくとも、ひとりで降ってる感じはなくなるんじゃない」
〈君〉は、少しだけ目を細めた。
「そっか」
その一言が、やけにやわらかい。
しばらくして、〈君〉は立ち上がる。
「帰るね」
「送るよ」
反射的に言う。
でも〈君〉は、ゆっくり首を振る。
「今日は、大丈夫」
その“今日は”が、少しだけ引っかかる。
「またね」
そう言って、〈君〉は店を出ていく。
ドアが閉まる音。
外を見ると、やっぱり雨は降っていない。
でも。
さっきまで、ここには確かに雨があった。
グラスの中の氷が、静かに溶けていく。
その音を聞きながら、ふと思う。
あの雨は、止んだんだろうか。
それとも、ただ場所を変えただけなのか。
「ところにより雨」
その意味を、少しだけ知った気がした夜だった。
雨が降っていた。
放課後の校舎は静かで、
窓に当たる音だけが、やけに大きく聞こえる。
「傘、忘れた」
__がそう言うと、〈君〉は少しだけ笑った。
「やっぱりね」
「なんで分かるの」
「そういう顔してた」
適当すぎる理由なのに、
なぜか納得してしまう。
〈君〉は自分の傘を軽く揺らした。
透明なビニール傘。
「入る?」
少しだけ迷う。
「いいの?」
「いいよ。どうせ同じ方向でしょ」
当たり前みたいに言う。
校門を出ると、雨は思ったより強かった。
傘に当たる音が、少しだけうるさい。
肩が、少し触れる距離。
それだけで、歩き方がぎこちなくなる。
「なんかさ」
〈君〉が前を見たまま言う。
「こういうの、久しぶり」
「こういうの?」
「誰かと一緒に帰るの」
意外だった。
「友達いないの?」
冗談っぽく言うと、〈君〉は少しだけ笑った。
「いるよ」
でも、そのあとに続いた言葉はなかった。
水たまりを避けながら歩く。
タイミングが少しずれて、
何度かぶつかりそうになる。
そのたびに、どちらかが小さく避ける。
「ねえ」
〈君〉が言う。
「雨の日って、ちょっとだけ世界が静かになるよね」
確かに、と思う。
音はあるのに、
いつもより遠く感じる。
「嫌いじゃない」
__が言うと、〈君〉は小さく頷いた。
「〈 〉も」
その横顔は、傘越しの光で少しだけぼやけて見えた。
「ここでいいよ」
分かれ道で、〈君〉が足を止める。
「ありがとう、傘」
「いや、こっちこそ」
少しだけ沈黙が落ちる。
雨の音だけが、間を埋める。
「じゃあね」
〈君〉がそう言って、少しだけ手を振る。
__も軽く手を上げる。
それだけ。
振り返ると、〈君〉はもう歩き出していた。
透明な傘の向こうで、少しずつ遠くなる。
次の日、雨は止んでいた。
教室に入る。
いつも通りの景色。
でも。
自分の机の横に、見覚えのないものがあった。
透明なビニール傘。
「あれ?」
手に取る。
見覚えがある気がするのに、
はっきり思い出せない。
「それ、誰の?」
後ろの席のやつに聞く。
「知らない」
即答だった。
「昨日からあった?」
「いや、知らん」
本当に知らなさそうな顔。
もう一度、傘を見る。
持ち手に、小さな傷がついている。
どこかで見たことがある気がする。
ふと、昨日の帰り道を思い出す。
雨。
静かな音。
隣に誰かがいた気配。
でも。
顔が、思い出せない。
「……誰だっけ」
小さく呟く。
その日から、__はその傘を使うようになった。
雨の日。
傘を開くたびに、
少しだけ世界が静かになる。
誰かと一緒に歩いていたような気がして、
でも、それが誰なのかは分からない。
ただ。
その時間が、嫌じゃなかったことだけは、
はっきり覚えている。
雨音の中で、ふと立ち止まる。
もしあのとき、
何かひとつでも、ちゃんと覚えていたら。
何か、変わっていたんだろうか。
透明な傘越しに、空を見上げる。
少しだけ滲んだ景色の中に、
思い出せない誰かの気配だけが、残っていた。
夕焼けが、やけに静かだった。
屋上には、__と〈君〉しかいない。
いつもと同じはずなのに、今日は音が少ない。
風は吹いているのに、
どこか遠くの出来事みたいに聞こえる。
〈君〉はフェンスにもたれて、空を見ていた。
その横顔は、夕焼けに溶けかけているみたいで、
少し目を離したら見失いそうだった。
「ねえ」
呼ぶと、〈君〉は振り向く。
その動きが、ほんの少しだけ遅れる。
「もしさ、明日が来なかったら、どうする?」
同じ質問。
でも今日は、答えを聞く前から分かってしまいそうで、怖い。
「今日をちゃんと終わらせる」
やっぱり同じ答え。
でもその声は、昨日よりもずっと軽い。
まるで、ここに留まる気がないみたいに。
「ちゃんと、って?」
__は問いかける。
引き止める理由を探すみたいに。
〈君〉は少し考えて、困ったように笑った。
「ちゃんと、さよならすること」
その言葉だけ、やけにはっきり聞こえた。
胸の奥が、静かに冷える。
「……誰に?」
聞いた瞬間、後悔した。
でも、もう遅い。
〈君〉は少しだけ目を細めて、
まっすぐ__を見る。
「君に」
風が吹く。
その一瞬で、〈君〉の髪がほどけるように揺れて——
輪郭が、わずかに崩れた。
「待って」
思わず一歩近づく。
「それ、どういう意味——」
言葉が続かない。
続けたら、全部終わってしまいそうで。
〈君〉は首を小さく振った。
「ねえ」
その声は、もうほとんど風と同じだった。
「明日、ここに来る?」
「来る」
即答する。
考える余地なんてなかった。
来るって言わなきゃ、
今この瞬間に何かが切れてしまう気がした。
〈君〉は、ほっとしたように笑う。
でもその笑顔は、
もう形を保てていなかった。
「そっか」
その一言が、やけに遠い。
「じゃあ、安心」
安心、という言葉だけが残って、
〈君〉の存在は、そこから少しずつほどけていく。
「約束ね」
その声が落ちるころには、
もう姿は、夕焼けと見分けがつかなくなっていた。
「待って、まだ——」
手を伸ばす。
今度こそ触れられると思った。
でも、指先はただ、
少し冷たい空気を掴んだだけだった。
—
気づいたときには、
屋上には__ひとりだった。
最初から、ずっとそうだったみたいに。
—
次の日。
屋上の扉は閉まっていた。
壊れていた鍵は、新しいものに変わっている。
開ける理由も、なくなっていた。
—
放課後、窓から空を見る。
昨日と同じ夕焼け。
同じ色。
同じ風。
でも、決定的に違うことがひとつだけある。
「約束」を、したはずなのに。
ここに来るはずだった〈君〉が、
もうどこにもいないこと。
—
__はふと思う。
あのとき、もし。
「来るよ」じゃなくて、
「行かないで」って言えていたら。
何か、変わっていたんだろうか。
—
答えは、どこにもない。
ただ、夕焼けだけが、
昨日と同じように静かに沈んでいく。
__はもう、手を伸ばさない。
伸ばしても、届かないことを知っているから。
—
それでも、風が吹くたびに思い出す。
触れられなかった指先と、
最後まで形を失っていった、あの笑顔を。