私の願い は、この命が燃え尽きる時、私の瞳に映る景色に貴方がいること
もし貴方の方が先に燃え尽きる時は、貴方の最後に見る景色が私でありますように
人生は何が起こるかわからない
突然の別れがすぐに訪れるかもしれないし、何十年もの先の未来で来るかもしれない
これからの事は誰も知らない
たとえ貴方の瞳に映る最後の人が私ではなくても、私は最後まで貴方を思い続けるよ
僕の心は深い夜だった
明けることはない夜…そう思っていた
初めて君を見た時、風が吹いた
夜明け前の匂いがした
満開だった桜がひらりと散り、暖かな風が頬を撫でていく春。
私は本気の恋をした。
一目惚れに近かった。好きになったら彼から目が離せなくなり、見ていると内面の素敵な部分が沢山見えてきた。彼を知るごとに、どんどん好きという気持ちが抑えきれなくなっていった。
気づいたら休み時間には話しかけに行ったり、食卓での学校の話に毎日彼のことを話したりするようになった。
こんなに異性の人を好きになったのは初めてだった。
彼に手作りの御守りを渡した時、受け取って貰えるか不安でとてもどきどきした。ありがとうと言って貰ってくれたあの時の笑顔を忘れることは出来ない。
片思いが、両思いだと確信した瞬間は空でも飛べるぐらい心が舞い上がった。
貴方を好きになって良かったよ。
毎月同じ日になると印をつける
今月もこの日を迎えられた、と
印をつけ始めて2回、もうすぐ3回目の印をつける日が来る。
初めての印は彼と付き合った日。カレンダーに記念日を書き留めたことはなかったが、この日は絶対に書き留めておこうと思った。
数が12個になるまではカレンダーに印をつけていこうと思う。ずっと数が増え続ければいいな。
僕は昔から感情というものが理解できなかった。
喜びや悲しみがどういったものなのなのかよく分からなかった。先生がどうして笑ったり泣いたりしないの?て聞いてきたけど、僕自身でさえ分からなかった…周りから機械のような人だとよく言われた。もしかしたら、僕は機械なのかもしれないと思ったが、ハサミで手を切った時に、指から鮮やかな赤色の液体が流れたため、僕はちゃんと人間なんだと思った。
歳を重ねるにつれ、道化のように生きる術を習得した。周りが笑ってると僕も顔を笑顔にした。周りに合わせて生きるのは大変だった。
ある日、彼女と出会った。彼女はよく笑う人だった。心の中で考えてることが全部表情や仕草に現れているみたいで、僕と正反対の人間だと感じ、僕は彼女を知りたいと思った。僕が芽生えた初めての感情だった。
彼女と同じ図書委員に入った。僕はあまり本を読んでこなかった。つまらないものだと思っていたからだ。「登場人物の気持ちになって考えてないからよ」
と彼女は言った。人の気持ちを考えられない僕が、紙の中の現実に居ない人物の気持ちを考えられる訳が無いと思った。彼女は色々僕に教えてくれた。風景の描写から感情を読み取る方法、こういう行動どんな心情が読み取れるか、とても丁寧に教えてくれた。僕はどんどん本の魅力に惹かれた。彼女の楽しそうな表情を見ると心がぽかぽかした。
「それが楽しいって感情だよ」
彼女は僕に沢山の感情を芽生えさせてくれた。知りたいという気持ち、一緒に居て安心する気持ち、彼女に会えない間寂しくなる気持ち、会ったら嬉しくなる気持ち、そして人を好きになるという気持ち…彼女は僕にとってかけがえのない存在になっていた。
朝学校に着くと、いつも来ている彼女の姿がなかった。遅刻かなと思ったけれど、その日彼女は来なかった。
次の日、彼女が交通事故に巻き込まれて亡くなったと先生が言った。僕は信じられなかった。気づいた時には教室を飛び出して外に出ていた。飛び出して行った後の記憶は無い。ただ、今まで感じたことの無い気持ちだけはずっと覚えている。
もう彼女に会えない…あの笑った顔を見ることが出来ない…この感情はなんて言うの…ねぇ、教えてよ…
僕は次の日、図書館に行った。あの感情が知りたかった。
"喪失感" 大切なものを失ったときの、空虚な気持ち
そのページを見た瞬間僕は涙がこぼれた。最後に教えてくれた感情がこれはひどいよ…僕はそっと辞書を閉じた。もっと色んな感情を知りたいと思った。天国で笑いながら彼女と話すために…
彼女の分まで生きよう。
僕は前を向いて、図書館を出た。