【秋風】
なんでだろう。
イライラする。
食べながら話をするのは、いいけど
箸でくるくる円を描くようにしないで。
相変わらず、最後に嫌いなトマト残さないで。
ごちそうさまって
食器そのままで、リビングに行かないで。
なんでだろう。
今日はなんだか特にイライラする。
ふぅ。
こういうときは、気分転換。
窓を開けて、空気を入れ替えよう。
秋風が冷やすのは、高まった感情か、この恋か。
[また会いましょう]
「またって嫌なイメージで、使われることが多いけれど、
僕は嫌いじゃないんです」
「だってあなたに約束ができます」
「明日が少しだけ楽しみになるんです」
『“また”が、“いつ”か分からないのに?』
「分からないから、いいんじゃないですか」
その時の私は、気づかなかった。
「また会いましょう」
あなたが別れ際に言う、その言葉に、
どれだけ心が奪われていたか。
どれだけ会えた時間を嬉しく思えていたのかを。
あなたからの連絡がないだけで、こんなに寂しいなんて。
こんなにも好きになっていた、なんて。
[飛べない翼]
体に合わない大きさだから
片翼しかないから
飛び方が分からないから
飛ぶことを諦めてしまったから
飛べない翼、にはそれぞれの理由がある
その理由は間違いではないから
飛べないことを責めたりしてはいけない
その心まで、責めてはいけない
[ススキ]
わたしはみぎ
わたしはひだり
べつに けんかをしてるわけじゃないのよ
きづいたら、たがいに
せをむけるように さいていたの
だから
ほんとうは なかよしなのよ
そうなのよ
みんな すきかっていうけれど
わたしは
わたしも
きにしないわ
かぜが ふくたびに
ちがうほうこうに ゆられながら
ふたりは くすくす とわらいました
(脳裏)
愛してる
とか言っちゃって
言っちゃって
ふと頭に思い浮かんだ句でさえ、
気持ちをごまかしてしまうのだから、
告白なんて、到底できやしない。