鏡の中の自分は偽物だ
偽物のはずなのに
何故、隠したものが映っている
隠し方が悪かったのか

いや

まさか

そんなはずはない

本物が入れ替わるなんてそんなこと……

眠りにつく前に飲む２錠の薬。
悲観的に思わないで。
明日も生きたいから。
明日も生きるためだから。

もし、永遠に、続くものがあるとしたら。
それを望めるとしたら。
それはこの命？
美しさ？
誰からかの愛？
争いのない世界？

立派なものは、望めない。
かといって、私以外の誰かのことを願えるほど、
私はできた人間ではない。

私が、苦しまない世界。
今の私は、それを望みたい。
怒りたくも泣きたくもない。
夜に訪れる不安とも戦いたくないから。

差別も戦争もない世界。
緑豊かで、様々な生き物が生きる世界。
空に灰色の煙が蔓延しない世界。
核の開発もロケットの開発も必要ない。
地球を大事にできる世界。
理想を叶えるには、人間がいらない。

言葉を覚え、意味も知らずに使いまわす子どもを見て
私の母を思い出す。
母の期待が重くて、でも応えたくて
必死だったあの頃の私を。
そして、あの頃の母も、ただ必死なだけだったのだと。
長い月日が、すれ違いを埋めていく。
母になった私が
老いていく母が
子どもに願うこと。
それはきっと同じなのだろう。
やっとあの頃の私が、報われる気がした。