夜中の午前2時
寝ようにも寝付けずテレビを付けてソファーに座る
恋愛ドラマが流れれば
海辺で1人の女性が泣くシーンだった
そのまま番組を変えるわけでもなく見続けていると
ピコンとスマホがなる
こんな夜中に誰かと思えば仲のいい友達だった
話を聞くと親に家から追い出され
気分転換がてらドライブに行きたいとの事...
(だぁれが車を出すと思ってんだか)
テレビを消して車の鍵を持って家を出る
ぶつくさ言いつつも車を出してしまうのは
惚れた弱みとでも言うのだろうか
「ごめん急に」
ラフな格好に一瞬心臓が跳ねる
「別にいいよ
海にでも行こう」
夜の海は月が反射して眩しく
波の音が自然と心に染みる
砂浜に腰を下ろすとぽつりぽつりと話し始めた
話すにつれ途切れることが多くなり、声が震えてくる
横を見れば泣いていた
(、、、綺麗)
涙は月明かりに照らされて
美しく光り輝いていた
『映画よりも美しく』
子供に怒鳴ってしまった
手を振りかぶった所で
怯えた顔が小さな時の自分と重なる
「ぁ、、ごめ、、」
小さな体が小刻みに揺れ
床にポタポタと雫が落ちる
叩かれると反射的に強ばった証拠
恐怖で溢れた生理的な涙
(母親のようにならないと決めたのに)
蛙の子は蛙
結局親のようになってしまうのだ
子供に優しく抱きつき
ごめん、と泣きながら謝る
頭に置いてくれた手は誰よりも暖かかった
まだ、育て方を見直せる
私と同じ境遇に置いてはだめ
顔を上げ、腫れた目を見て笑がこぼれる
「目、腫れちゃったね笑」
ほっぺを両手で挟んで2人笑い合った
『トンビが鷹を産む』
中学3年から引きずった反抗期
両親に悪いと思ったことは何度もあったが
今更言うに言えずのらりくらりしていると就職先が決まり一人暮らしする事に
キャリーケースを引き改札を抜けると
後ろから大きな声で名前を呼ばれた
(恥ずかしい、、!!)
やめてよって言おうと思い振り返る
(ぁ、、泣いてる)
今までよりずっと遠くに見える両親
涙を流しながら笑顔で手を振っていた
目頭がだんだん熱くなって
頬に涙が伝う
「今までありがとう!!!!」
気恥ずかしくて言えなかったけど
やっと言えた
親に背を向け踏み出した1歩
追い風が吹いた気がした
「追い風」
白いワンピース
白生地に映える桜の着物
とにかく白が似合う君は
僕が綺麗だと褒めると『また着てあげる』と
花が咲いた様に笑った。
今の君の白服は、世界で一番似合ってない。
似合った服を買ってあげるから
好きだと言った小説も、漫画も
観たいと言った映画も一緒に観るからさ
『早く起きてよ、』
棺桶に入ってしまった眠った彼女。
葬式終わり、彼女のネックレスを貰う
僕はこれから彼女の形見のネックレスを付け
彼女と一緒に生きて行く。
「貴方と一緒」
死人に最後に届くのは自分の声
けれど、生きている人間が最初に忘れるのは
思い出になった人の声
「声」