涙の通った跡が
消えなくて困っている
何度も洗ったし
クレンジングで擦ってみたり
顔にくっきり刻まれた
青の痕跡
鏡越しに眺めていたら
ふ、とまた悲しくなって
堪えていたら
もっと悲しくなって
でも、いつか消える、と
我慢して笑った
「涙の跡」
あまりに日差しが強いから
日焼けしないように
半袖の口を引っ張ってたら
チューインガムが落ちて
アスファルトにベタつくみたいに
びろーんと伸びた
ベタベタに伸びた袖口を
元に戻そうと試みるけど
粘着する糸が絡みついて
余計に収まりが悪くなった
全部、この熱さのせいだろう
私が犯した過ちも
全ては二酸化炭素の仕業かも
きっと、そうなのかも、しれない
「半袖」
プールサイドから
タプタプと澄んだ透明の中へ飛び込む
甚平はずぶ濡れだけど
摂氏18度に設定した
クーラーに跨がり
急速冷風で空へと舞い上がる
その風が街中の風鈴を
チリンと鳴らし
ソーメンの氷が
グルグルと回る
グルグルで刺激された扇風機が
強のまま首をかしげて
さらに空へと後押しする
蝉たちは歓声をあげ
目指すは
青い空と
白い雲が
とろける
ブルーハワイのてっぺんまで
そう
高く
まだ
高く
「真夏の夢」
この事は
誰も知らない
僕たち二人の秘密で
そう、世界で
二人だけの。
はずが
バレてもうた
え?なんで?
なんでバレた?
おいおい、ちょっと待って欲しい
これは二人だけの秘密の話なんだから
そんなにほじるな
厚かましいな
謝れ、つったって
一体誰に謝るんだよ
僕たち二人で燃え上がっていたはずが
何故だか世界に燃え移って
何故だか世界に謝罪して
何故だか僕らは路頭に迷う
「二人だけの。」
ヒートテックの肌シャツに
タートルネックを着込んで
ライダースジャケットを羽織り
靴下を2枚重ねて
厚底のブーツに履き替える
マフラーに手袋
ホッカイロを身体に貼り付けて
ジーパンも2枚重ねて履いとこう
ニットの帽子と
耳当てをつけて
ジョギングしながら
YMCAを熱唱したい
今年の夏は
そんな夏
「夏」