10月27日 日曜日
No.1【紅茶の香り】
10月23日–今日もやかんを手に取り自ら罪悪感に飛び込 むティータイムを迎える。
甘酸っぱいレモンティーの香りが、私を甘酸っぱい青春の日々の記憶を抉り出す。
月に一度のあの子とのお茶会。
きつい部活が唯一休みの一日。毎日部活で顔を合わせるあの子とは、その休みさえも一緒に過ごす。満面の笑みで私に話しかけてくれたあの子は私にとって憎い存在でしかなかった。彼女の笑顔に私も笑顔で応じる。「こいつの人生なんかめちゃくちゃになってしまえばいいのに」そんなことを私が思っていたなんてあの子はちっとも思わなかっただろう。
私はただ羨ましかった、、、
私より遅くに始めたバレーでエースになれるあの子が。
運動だけでなく勉強もできちゃうあの子が。
先生にも男子にも女子にも、、みんなに好かれちゃうあの子が。
なぜあんな子が私なんかの底辺の人間と仲良くするのか
私は引き立て役だった。
きっと。そうだった。いや、絶対そうだった。
「私は一番信じたいって思った人を信じて仲良くしてるだけだよ」
泣いて怒る私を抱きしめながら囁いたあの優しい声が今になって思い出される。
何故私はこの言葉を忘れていたのだろうか。
私は気づいてあげられなかった。
今すぐあの子に会いたい。もう一度会って話したい。
一緒にまたレモンティーを飲みたい。
3年前、1人で部屋で毒入りのレモンティーを飲んで自害したあの子と。
––––––そんなわけない。あんな完璧な子が自殺するわけはない。
私は今日も1人暗闇の中でレモンティーを口にする。
罪悪感でいうことをきかなくなった私の手は傷でいっぱい。そして今日も新たな傷が増える。飛び散った血飛沫がレモンティーの中に入る。
涙が止まらないのは何故だろう
あの子がいなくなって私は嬉しい
きっときっとそうだろう。
私は赤の滲むレモンティーを口にした。
甘酸っぱい香りがする。
気づけばやかんを手に頬には涙が流れていた。
今日もまたこの紅茶の香りに包まれて、、、