毎日同じ景色。毎日同じ人物。毎日同じ行動。
どれだけ繰り返しているのかわからない。
つまらなくてたまらない光景。
でも時々、つまらない光景に新しい灯りが灯る。
その灯りは私だけを照らしてくれる。
私はその灯りによく話しかける。
「今日は外をさんぽしたんだよ」
「今日は初めてお寿司を食べたの」
灯りは何も言わない。
何も言わないけれど、優しく私だけを見ていてくれる。
少し前から私のそばにいてくれる灯り。
時々しか灯ってくれないけど、私には充分だった。
でも…いつからかな…。
灯りが灯る時が、少しずつ、少しずつ、増えていって、最初はわからなかった灯りのあたたかさも、わかるようになったの。
側にいてくれる時間が増えて、私は、夜が寒くなくなっていった。
「今日はね、久しぶりにケーキを食べたの…
甘くて…ふわふわで…すっごく美味しかった…」
灯りに、いつものように話しかける。
「明日はお外に出られるんだって…。
お誕生日…だから……沢山遊んでもいいって…。」
少しずつ私はまぶたが重くなっていった。
「……灯りさん…明日も…来てね…」
灯り以外、誰もいない部屋。
私、寂しくて好きじゃなかった。
でも、灯りさんが来てくれるから、もう、寂しくないよ。ありがとう。灯りさん。
灯りはただただ、私を優しく見守ってくれた。
彼女は、いつも一人、同じ部屋にいた。
誰も来ない。灯りも灯らない白い部屋で。
灯りがないなら、と、僕が彼女の灯りになった。
彼女は笑顔を沢山見せてくれるようになった。
でも、少しずつ彼女の笑顔は、元気さを失っていっていた。
どうにかしてあげたかった。
でも、できなかった。
僕は君とは話せない。僕は与える側じゃなくて、奪う側だから。
君とまた会えるのは、次はもっと暖かい場所になる。
もう君が凍えることはない。寂しくなることもない。
僕は彼女の頭に初めて手を乗せた。
心なしか、彼女の表情が安らかになったかのように思えた。
"お疲れ様
次会うときは、また沢山お話したいな…"
朝が僕達を優しく包みこんだ。
安らかな瞳
私は毎朝一つの夢をみる。
ある日はさんぽを。
ある日は家でコーヒーを。
ある日は山中で旅をしている。
そしていつも同じ人物を見る。
寂しげに、でも嬉しげに私の顔を。
いつも同じ位置から、見上げている。
そしてこう声をかける。
「今日はコーヒーを飲んでいるんだ。」
「今日は本を読んでいるよ。」
声をかけると、声を聞いた人物は、いつも私に同じ笑顔を向けてくれる。
無垢な可愛らしい笑顔。
その笑顔のまま、いつもこう言う。
「いつも一緒だよ。」
私はいつもこう応える。
「これからも一緒だよ。」
夢から覚めると、私の隣には……。
あの時と同じ笑顔をくれる、君がいた。
いや、あの時と変わらない。何も変わらない。
私の手元には君がいた頃の証がいる。
だから今までもこれからも変わらない。
私の隣には、一つの写真立てがある。
子供の頃、一緒に育った君。
私の隣の可愛らしい君。
お尻の茶色い毛を振って、今日も私の夢の中でいつも隣にいる。