毒を浴びてしまったので
透明なコップに
透明な水をなみなみついで
心をひたす
怒りをひたしてじゃぶじゃぶ洗う
あなたの敵は私ではないのにどうして向かってくるのだろう
私たちは小さな箱庭に住んでいて
運命共同体なのに
いつもだれかに毒をはく
水はいつもにごっている
ここから逃げ出せないなら
せめてきれいな水を汲んできて
せめて自分からにじみでる
淀みを洗い流してゆく
(透明な水)
私の理想のあなたのままであなたはどんどん走ってゆく
勝手にあなたを道しるべにして私も必死についてゆく
お互い行き着くところは別々であろうとも
あなたのようにしなやかに強く気高く生きていきたい
息を切らして足がとまる
遠くであなたの声がする
暗闇のなか 泥にまみれても
顔を上げろ 前を向いて
追いかけろ凡人
私の理想を見失うな
(理想のあなた)
ああ
押しつぶされる
胸が苦しい
空気が重くのしかかる
見えない寒天にかためられて
身動きがとれない
逃げだしたい
突然おさらばしたくなる
どこかに
どこに
目をつぶろう
(突然の別れ)
優しく指をからめあいほほ笑む女の子
パーカーをきた男の子にはにかみながら寄りそう
イチョウが舞うキャンパスで
これから二人で文化祭をまわるのだろう
遠くでたくさんの友達が呼んでいる
空はどこまでも高くて
きっとふたりは初めての恋人
そんなすてきな恋物語の読み取れる写真を
迂闊にもワタシの目の届くところに放置するな夫よ
こんなにも初々しい笑顔私には見せたことがないような気がしなくもないが
まあいいや
そっとここにしまっておいてあげるから
いまから二人で散歩に行こう
(恋物語)
お元気ですか
暑い日が続きますがお加減いかがですか
真夜中に手紙を書く
毎回同じ文章で
心を飛ばして寄り添ったつもりで
早くあいたいです
ゆっくりやすめていますか
さびしいおもいをさせてごめんなさい
そこまで書いてしんとして
結局また手紙はだせない
(真夜中)