暑い。以外の何物でもない。
冬よりは気分が落ち込まないからいいけど。
でも冬より自分が奈落に落ちていっていることに気づかないから。
気づいた時には手遅れなんだ。
ああ、こんな鬱屈な夏なんて来ないでくれよ。
ついでに冬も、秋も、春も。来ないでくれよ。
僕は周りのみんなと何かが違う気がする
周りが楽しそうに笑顔で話していても笑顔でいることが出来ない
周りが悲しそうに泣いていても涙を流すことが出来ない
誰かに怒られていても悔しむことも苛立つことも苦しくなることもない
どんなに評判の高い料理店に行っても美味しいと感じることもない
僕には何があるんだろう
そして僕は何者なんだろう
ある日、育ててくれたおじさんとおばさんに聞いたことがある
「僕は何者なの?僕は生きていてもいいの?」
おばさんは少し笑いながら答えてくれた
「あなたはあなたよ。好きに生きていなさい。」
おじさんは何も言わなかったけど、おばさんの言葉に頷いていた
その答えをなにも不思議に思わなかった
そんな僕がいた
でも、聞いてしまったんだ
おじさんとおばさんの会話を、ある言葉を。
──あなた、いつあの子に話しますか。あの子がクローンだってことを。
旅に出ると君が言った。
3年経っても帰ってこなかった。
僕はずっとひとりだった。さびしかった。
それを救ってくれたのが君だったのに。
また僕をひとりの世界に閉じ込めた。
今度はどれだけ待てばいい?
1年前、君がくれた手紙と写真を握りしめて僕は思う。
僕も旅に出たら君に会えるかな。って。
写真に写るのは、どこか見知らぬ地で楽しそうにたくさんの仲間と笑顔の君。
僕はこんなに苦しいのに。
置いていかないで。
ごめんね、こんな僕で。
僕も旅に出たら変われるのかな。
きっと今世も来世も届くことの無いこの思い。
思わせぶりなことをするのはやめてよ。ねえ、先生。
僕はずっと先生が好きだよ。
七夕の夜に
願いを込めて
星空へ
旅立った僕の
手から星が零れた