たーくん。

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6/16/2025, 10:14:45 PM

木の根っこのように沢山別れている道。
僕は、主の脳の中に住んでいる。
主が思い出したい記憶を探し、思い出させるのが、記憶の冒険者である僕の役目だ。
記憶の地図を持っているので、どの記憶がどこにあるか大体把握している。
だからといって、主は僕に頼ってばかりなので、たまには自分で探してほしい。
さて、今日も主に頼まれた記憶を探しに行くか。
えーと……探す記憶は……。
“昨日の晩御飯は何を食べたか“
それぐらい自分で思い出せよっ!!!
主の脳内で文句を言いながら、昨日の記憶の道へ向かった。

6/16/2025, 1:14:37 AM

シンと静まり返った実家の台所。
食器棚には、大量の皿とコップが並んでいる。
実家に親父が一人で住んでいたが、先日亡くなった。
俺は遺品整理のために来たけど、物が多くてどうしようか悩む。
皿とコップは家にあるし、処分でいいか……。
ふとテーブルの上を見ると、二つのマグカップが寄り添うように置かれていた。
ピンクのマグカップと、ブルーのマグカップ。
母さんと親父のマグカップだ。
よく二人でコーヒーを飲んでいたことを思い出す。
多分、親父は先に亡くなった母さんのマグカップを、母さんが座っていた席に置いて、一人でコーヒーを飲んでいたんだと思う。
そう思うと……少し切ない。
この二つのマグカップは持って帰ることにした。
持ち帰った母さんと親父のマグカップは、今では花瓶代わりにしている。
並んだ二つのマグカップには綺麗な花が咲いていて、寄り添いながらこっちを見ていた。

6/14/2025, 11:02:19 PM

多くの人が空を見上げている河川敷の花火会場。
もしも君が退院したら、またここへ来ようと約束していたのに、君は遠くへ……行ってしまった。
ドーン!と大きい音を鳴らしながら、花火が打ち上がる。
夜空に、大きな光の花が咲く。
花火はこんなに綺麗なのに、心から感動出来ない。
やっぱり、君と一緒に見たかったよ……。
俺の気も知らず、次々と打ち上がっていく花火。
俺は、ただぼーっと花火を見ることしか出来なかった。

6/13/2025, 10:48:16 PM

色んな音が混じり合う賑やかな都会。
どんなに周りで音がしていても、君の口から出る感情を乗せた言葉だけは聴き取れる。
だって、それは君だけのメロディだから。
「どうしたの?私のことじーっと見て」
「いや……別に、なんでもないさ」
「えー、気になるー」
今日も彼女は、色んな言葉のメロディを奏でていた。

6/12/2025, 11:20:21 PM

人で埋め尽くされたライブ会場。
全員、私の単独ライブを見に来てくれたファン達だ。
現在全国ツアーの真っ最中で、今日は大阪に来ていた。
数年前の私が、今の私を見たら、きっとすごく驚くだろう。
全国ツアーが出来るほど、私は成長したから。
私はステージの真ん中に立ち、マイクでファン達に呼び掛ける。
「皆ぁーーー!私に好きなもの教えてくれるーーー?」
私の呼び掛けに、ファン達は「いいよーーー!」と答えた。
「じゃあ私がI love?って聞くから、そのあとに続いて好きなもの言ってね!いくよ!I love?」
「たこ焼きーーー!」
「551の肉まんーーー!」
「阪神ーーー!」
「串かつーーー!」
「通天閣ーーー!」
ファン達は、各々好きなものを叫んでいる。
「なんでやねんっ!私の名前を言ってよーーー!」
私がそう言うと、ファン達は笑い、会場が湧く。
これはライブでいつもやるコールアンドレスポンス。
今日は大阪でライブをしているから、ファン達は大阪にある物を言ってくれたみたい。
「皆、大阪バージョンで答えてくれてありがとう!それじゃ次の曲いくよーー!」
私はマイクをぎゅっと握り、ファン達に感謝を込めて歌った。

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