美しい。
美しい容姿に生まれたかった。
端正な顔と、身長185センチの逞しい体があれば女性からモテたし、男性には馬鹿にされる事はなかった。
僕の顔は整ってはいるが、老け顔なので二十歳の時にそう見られなかったのが残念だった。
人からブサイクと言われた事はないが好きな娘とは付き合えなかった。
自分を冷静に分析すると。
顔は並。
勉強は出来ない。
運動神経は悪い。
不器用。
性格は良い。
特技は口が上手いことかな…。
会話でよく人を笑わせたりするが、お金儲けにはつながってない。
口は災いの元、無口だとしても愛想良く挨拶してれば嫌われることはない。
だから、口下手でいいので、勉強が出来るように能力を変更したかった。
そうすれば公務員になれただろうし、生活も安定し、幸せな結婚が出来て親孝行もできただろう。
だか、能力はゲ−ムのように変更出来ない。
与えられた能力で勝負するしかない。
容姿は年を取り衰えていくが、中身は美しいと思われたい。
この世界は
この世界は変化している。
僕が子供の頃はパワハラ、セクハラが当たり前だった。
担任の先生や少年野球のコ−チに叩かれたり、蹴られたりした。
じいちゃんや親父には怒鳴り散らされたので、お陰で人の顔色を伺う性格になってしまった。
子供なんだし、何かまずい事をしたのなら諭してほしかった。
その子供の性格や能力を考慮して教育してほしかった。
のちに、担任の先生が頭が醜くハゲたからざまあみろ!!と思った。
少年野球チ−ムは弱いまま。
軍隊みたいな指導よりも理に叶った練習しないと強くなるわけがない。
じいちゃんの葬式は悲しいフリをした。
感謝もしてるけどそんなもんだよ。
親父の葬式は育てもらった恩義があり、男は人前で泣くもんではないと堪えたが、無理だった…。
現代は、人権がより大切にされるいい時代になった。
何かトラブルがあり、声を上げれば誰かが助けてくれる。
困った事があれば、スマホで検索すれば色々と教えてくれる。
ああ、生まれるのが30年早かったな…。
僕が若い頃にスマホがあれば、つまらない事にくよくよ悩んだりせず、もっと楽に賢く生活できたな…。
現代社会の課題、コロナの攻略法は分かったし、あとは夏の暑さを克服するだけだ。
世の中は日々変化している。
人生いい事ばかりではないが、悪い事ばかりでもない。
僕が出来る事は、野良猫の喧嘩をとめるくらいだ。この世界は、明るく楽しいと思えるように生きて行きたい。
どうして
「今までありがとうございました。お世話になりました」
マリスは丁寧に挨拶した。
「どうして仕事を辞めるんだ?今まで頑張って来たじゃないか!もったいよ!もう一度考え直せ!!」
僕は必死に説得した。
なんて職場で働きたかった。
若いのなら、将来を考えて稼げる職場に転職した方がいい。
むしろ賛成だ。
会社の業績はいい。
なのに社員に還元されない。
過去に店長が二人退職するのを見た。
理由は聞かなくても分かる。
報酬が良ければ仕事を辞めてわざわざ転職なんかしない。
仕事に見合った給料が貰えるなら、僕も店長に挑戦するがとてもそんな気にはならない。
この会社でずっと仕事したい。
将来は店長になって、いい生活がしたいと思う環境じゃないと未来はない。
社員が会社を支える。
それを分かってもらいたい。
社長には会った事はないが、職場の待遇が我々従業員への答えだと思う。
だから興味がない。
社長と話して胡麻するよりも、来店して下さるお客様とお話する方が有意義で楽しい。
色々な社員がいるが、休憩時間に漢字の勉強をする外国人従業員には驚いた。
当然、仕事も優秀だ。
そんな人達は会社を見限って転職した。
人はなかなか育たない。
ましてや外国人なら尚更だ。
様々な思いを抱きつつ、今日も僕は働く。
夢を見てたい。
母親の望みは、僕が結婚して子供を授かること。
親孝行を実現するなら、兵庫県に引っ越して高収入の仕事に転職し、素敵な方と結婚する。
月に一度は、僕が農業を手伝い、奥さんは手料理を振る舞う。
年に一度は、母親を車に乗せて観光に連れて行くのが理想だ。
なんて夢を見てたい。
若い頃に結婚してたら実現できたことだ。
恋愛に関しては精一杯努力したがダメだった。
この年齢で転職は難しいし、高収入でないと子供が授かる年齢の方とは結婚出来ない。
僕の親孝行は仕送りは拒否されるので、話のネタがあれば電話で話し、記念日に土産を郵送するぐらいだ。
親からすれば僕は自慢の息子ではない。
まったく値上げしなかった株みたいで心苦しい。
せめて母親が生きている間に、何かで成功して自慢させてあげたい。
そう思う日々である。
ずっとこのまま
「今日はどうもありがとう。とっても楽しかった」
「僕もだよ。じゃあね」
ずっとこのまま君と一緒にいられたらいいのに…。
デ−トのような楽しい時間はあっという間に過ぎる。
仕事の時間は長く感じるのにね…。
若い頃は、女性をシルビアに乗せて神戸の街をドライブした。
恥をかかないよう前日にデ−トコ−スを一人で走行した。
カ−ナビやスマホはない時代だから、地図を片手に運転し、よく道に迷ったものだ。
自分なりに色々と努力したけど、結局結ばれることはなかった…。
僕とデ−トしてくださった女性達は、今どこでどうしているのか分からない。
もちろん、幸せな人生を歩んでいてほしい、僕を選ばなかった事を後悔させたい思いもある。
恋愛ドラマやアニメを視聴していると、紆余曲折を経て、結ばれてハッピ−エンドを迎えている。
だから結婚が幸せなんだとずっと思い込んでいた。
だが、年齢を重ねて色々な知識を得て価値観が変わった。
僕は幸せを逃したのか?
それとも不幸を回避したのか?
いまだに謎のまま。