「紅の記憶」
眼前は
鮮血のような色に染まった
赤く
紅く
赫く
その景色は低く呻り
語りかけてくる
お前の努力は無駄だった
お前の真心は無力だった
また、お前は無惨にも
可哀想に
悲しそうに
何もなせず墜落するのだと
私では決して望んだ場所に辿りつけないと
呪ってくるのだ
失敗する度に
失くす度に
繰り返し語りかけてくる
その暗い声は
どこか
私の声に似ていた
「吹き抜ける風」
熱風が私の横を駆け抜けた
突如、
私の体から
血が流れる音がして
肺が伸縮し
呼吸が始まる
心の臓が駆動する
目に映る景色は着色され
私は初めて世界を知った
ブリキと大差なかったはずの私は
あなたの風に吹かれて
心を手に入れたのだ
「記憶のランタン」
私の暖かい場所
私の明るい場所
私の幸せな記憶には
あなたばかり
暖かさも
明るさも
知らなければ
求めなかったのに
知ってしまった私は
欲しくて、欲しくて、欲しくて
手を精一杯伸ばすのだけれど
届かなくて
気づかれなくて
こんなにも何もできない私が嫌いで
冷たくて、暗くて
惨めな気持ちが
次々と胸に刺さり続けて
痛みだけしか手に入れられないのに
私はこのランタンの灯りを消せないのです
「君を照らす月」
綺麗だね
と、君は言う
綺麗だね
と、私も言う
君は月を思って
私は月に照らさられる君を思って
綺麗だと
二人で言って微笑みあった
あれからしばらくして
私は月を苦手になったけれど
君は今、
月を見て笑っているかな?
笑っていて欲しいな
月に照らされる君が大好きだったから
「ささやかな約束」
約束
あなたにとってはささやかで
私にとっては手放せない
大切
毎日待ってはいるけど
訪れる冬のように
私は冷たくなるばかり
あなたが言った大切だよと言う言葉は
私を暖くさせるけれど
独りで歩くこの道は冷たくて
あなたの本当の大切に
私はいないんだと実感させられる
冬の街の賑やかなイルミネーションが
私を惨めに照らしている
降り始めた雪のように
この気持ちも
落ちて
溶けて
消えてしまえば良いのに